2015 Fiscal Year Annual Research Report
心拍周波数・身体加速度間の協働連関指標の創出と関連因子の探索
Project/Area Number |
15J08579
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 健太郎 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 心拍変動 / クロモグラニンA / ストレス / 疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
自律神経活動と身体活動との協働連関に関連する因子を日常自由行動の中から探索することを目的として,連続48時間モニターの形で,今年度は40名近くの方に被験者となっていただき携帯型身体加速度計測計によるデータを取得した.また,被験者には,就寝直前,起床直後に口腔内サリベットコットンを用いて,唾液の採取を行ってもらった.これら得られたデータのうち,自律神経活動については,1分感覚で得られた心拍周波数成分のHF/TFを副交感神経,LF/HFを交感神経の指標とし,身体加速度間で交差相関解析を行いlag(両者のずれ)を調べた.lagについて検討を行ったところ,lagが生じる割合が加齢とともに増加することから,年齢依存性があることがより明確となった.また,就寝前のlagが生じる群では,うつ傾向や,神経症,疲労度といった心理的要因のアンケート結果で有意に数値が高くなる結果となった.これらのことから自律神経活動と身体活動のlagを調べることにより,非侵襲に日常自由行動下で,ヒトの心理的ストレスが検出される可能性が示唆された. また,睡眠前後に採取してもらった唾液について,ELIZA法によるクロモグラニンAの測定・分析を行った.心理ストレスを反映するとされているクロモグラニンAと被験者のアンケート結果について解析を行った.起床直後のクロモグラニンAは疲労度との関連が示唆され,疲労度の高い群では,有意にクロモグラニンAの濃度が低くなった.このことから,唾液採取による簡便な方法での疲労度の判断できる可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公募した被験者のデータについて,順調に取得することができた.以前のデータ取得と比べ,ノイズ対策がうまく働くことができた.解析手法についても,交差相関解析に加え,多変量解析を用いて,より明確な結果を得ることができた.心拍変動・身体加速度間の協働連関について,アンケート結果との対比を行ったところ,たてていた仮説に近い結果を得ることができた.仮説の段階では,協働連関の障害とストレス感が関係すると考えていた.その結果が示されるだけでなく,うつ傾向や疲労度,神経症についても有意な結果を得ることができた.さらに,就寝前の協働連関に着目することで,心理的要因について,より有意な結果が得られることが発見できた.また,被験者に簡易型睡眠モニターを用いて,夜間睡眠中のSPO2及び無呼吸低呼吸についての分析を完了することができた.これらを次年度で夜間睡眠中の心拍変動と対比し,解析させる計画である.しかし,平日日中に3日連続での被験者を公募したため,年齢層に偏りがみられた.また,男性の被験者が少なく,女性のみでのまとめを行うに至った.予備実験を行っていた運動負荷試験については,倫理委員会の承認が得られ,本実験の詳細なプロトコルの作成が完了した. 当初の計画では,心拍変動との対比を行う予定であった唾液中のストレス指標であるクロモグラニンAについて,心拍変動との比較についての解析は現在進行中であるが,クロモグラニンAのみで,疲労度との関連を示唆できる結果を得ることができた.一方で,唾液中クロモグラニンAの分泌量については,個人差が非常に大きくなってしまったところについて,未だ解析法に対する解決方法が見出せていない.クロモグラニンAの結果については,国内学会での発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,心拍変動・身体加速度間の協働連間について,解析を行っていく.最適なデータ幅・解析ウィンドウを探索し,より演算精度の適している解析条件について検討する.就寝前後に着目して行っていた解析について,日中にもその対象を広げ,1日の協働連関の変動を明確にし,関連する因子の探索を行う.昨年度分析を終了させた,被験者の夜間睡眠中の睡眠障害と心拍変動との解析を行う計画である.また,運動負荷試験について繰り返し,運動負荷させることにより,疲労度を増幅させ,その結果心拍変動にどのような変化が見られるのかを心拍変動の観点からのみならず,協働連関の側面からも実験を行い解析していく計画である.さらには被験者の問診結果による各種病態,静脈血採血による生理的検査に対しても,心拍変動との多変量データ解析や,主成分分析を行い,被験者のさまざまな様態を反映した解析手法の確立を進めていく予定である. 昨年度得られたクロモグラニンAと疲労度との関連について,詳細なメカニズムを探索するとともに,心拍変動や身体活動との協働連関,さらには睡眠障害との関連について,検討を行っていく.また,被験者の年齢層にばらつきが見られたので,若年層を中心にデータ取得をさらに行い,解析結果の有用性を高める予定である. 得られた研究成果を,国内外の学会や研究会で発表を行い,英文学術誌に登校する予定である.また,本研究の将来性,有用性,臨床応用について理解が得られえるように,社会一般の方にわかりやすく説明・解説できるよう心がけをする.新しく得られた結果や考察を加え,投稿論文・博士論文としてまとめる,
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