2015 Fiscal Year Annual Research Report
マラリアの病態形成における宿主因子MRPの役割に関する研究
Project/Area Number |
15J08617
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
溝渕 悠代 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | myeloid-related protein / malaria / Plasmodium berghei / splenomegaly / hepatic injury |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は、①MRP KOマウスの作製及びMRPアンタゴニストの入手、②MRPによるMΦ活性化の解析、③MRP投与がマラリア病態へ与える影響の解析 を行った。 ①に関して:CRISPR/Cas9システムによるMRP KO BALB/cAマウスの作製に成功し、実験動物中央研究所にてマウスの微生物クリーニングを行った。現在はマウスを繁殖し、実験に必要な個体数の確保に努めているところである。またMRPアンタゴニストとして最近同定されたPaquinimodを入手し、in vitroにおいてMRPに対する阻害効果を確かめた。 ②に関して:MRPのMΦ活性化能を検討するため、in vitroにおいてRAW264.7 MΦ細胞株をMRPで刺激したところ、TNF-α、IL-1β、IL-6といった炎症性サイトカイン及びケモカインCCL2 (MCP-1) のmRNA発現が促進されることが明らかになった。従って、これらの因子が、MRPを介した炎症や細胞集簇に関与していることが示唆された。 ③に関して:P. berghei感染後のマウスに7日間MRPを静脈内投与し、病態への影響を解析したところ、末梢血中感染赤血球率には変化が見られなかった一方で、脾腫・肝障害が有意に悪化した。そして、これらマウスの脾臓・肝臓においてはMRP陽性細胞集簇の増強が認められた。さらにMRP投与は非感染マウスにおいても同様に脾腫及び肝臓にMRP陽性細胞の集簇を誘導し、それらMRPを投与した非感染マウス臓器においてCCL2・CCR2や炎症性サイトカイン (TNF-α、IL-1β、IL-6) のmRNA発現が上昇していた。以上のことから、これらのMRPによって誘導される炎症関連因子がマラリアの脾腫・肝障害に関与していることが示唆された。これは、MRPがマラリア病態形成に寄与することを示す初めての知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、① MRP KOマウス・MRPの中和抗体の作製、②MRPによるMΦ活性化の解析を行う予定であったため、当初の計画通りに研究を遂行できている。MRPの中和抗体に関しては、当初作製を計画中であったが、MRPの阻害剤として開発されたPaquinimodが入手可能になったため、この薬剤を用いることにした。この薬剤のin vitroにおけるMRPの阻害効果は確かめたので、今後in vitro実験及びin vivo実験での使用を検討中である。 さらに当初の予定に加え、本年度は③MRP投与がマラリア病態へ与える影響をin vivoで解析することができた。また、その結果はin vitroにおけるMΦのMRP刺激実験の結果と相関しており、MRPは細胞集簇及び炎症性サイトカインの産生誘導を介してマラリアの脾腫や肝障害を悪化させることが明らかになった。よって本年度の研究で得たデータは、MRPがマラリアの病態形成に関わる重要な因子であることを示唆する重要なものであり、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
MRPによる血管内皮細胞活性化・障害:「MRPはTLR2およびTLR4を介して、下記に示した血管内皮細胞活性化・障害を促進する」と仮説を立てている。MRPによる血管内皮細胞活性化を解析するため、MRP刺激による血管内皮細胞の接着因子の発現(ICAM-1、VCAM-1等)、血管内皮細胞が産生するケモカイン発現(MIP-2、TNF-α等)、血管内皮細胞間接着因子の発現(カドヘリン等)、及び血管内皮細胞自体の障害(iNOS、eNOS、NOX等)の変化を解析する。また、MRPのよるこれら分子の活性化がTLR阻害で抑制されるかを確かめる。 MRP陽性細胞集簇へのCCR2関与:細胞集簇へのCCR2の関与が示唆されたため、現在はMRP陽性細胞がCCR2を発現している可能性を考え、FACS解析を行っているところである。また、CCR2の阻害剤を用いた感染実験を行い、細胞集簇の抑制が脾腫及び肝障害を抑制するかどうかも検証したいと考えている。 MRP KOマウスもしくはMRP阻害剤を用いたマラリア原虫感染における病態解析:「マラリア原虫感染MRP KOマウスでは、MΦ活性化・血管内皮細胞活性化が抑制され脾腫及び肝障害が抑制される」と仮説を立てている。また、MRPの阻害剤Paquinimodを用いた感染実験でも同様な結果を期待している。 TLR2/4-/-マウスを用いたマラリア原虫感染における病態解析:「マラリア原虫感染TLR2/4-/-マウスにおいて、MRPを介したMΦ活性化・血管内皮細胞活性化が抑制され脾腫及び肝障害が抑制される」と仮説を立てている。TLR2/4-/-マウスの購入・繁殖を計画中である。
|
Research Products
(2 results)