2015 Fiscal Year Annual Research Report
発酵阻害物質バニリン存在下での酵母mRNA fluxの解析と優良酵母育種への応用
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15J08781
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
NGUYEN THI MY TRINH 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | バニリン / フルフラール / バイオエタノール / 翻訳抑制 / mRNA flux / 出芽酵母 / ADH7 |
Outline of Annual Research Achievements |
出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの翻訳活性を抑制する高濃度バニリン存在下でも、medium-chain alcohol dehydrogenase/reductaseをコードするADH7 mRNAは優先的に翻訳されることを明らかにした。S. cerevisiaeはAdh7のパラログとしてAdh6をもつ。ADH6、ADH7両遺伝子のバニリンストレス下での発現を検討したところ、mRNAレベルは両遺伝子共に上昇したのに対し、高濃度バニリン存在下での翻訳レベルの上昇はADH7でしか認められなかった。そのため、ADH6は転写活性化されるもののバニリンによる翻訳抑制によってタンパク質レベルが上昇しないのに対し、ADH7は翻訳抑制下でも優先的に翻訳されることが明らかとなった。また、ADH7のプロモーター領域を利用することで、ADH7以外の遺伝子についても、高濃度バニリン存在下で優先的に翻訳させることが可能であることを確認した。そのため、ADH7プロモーター制御下でADH6の発現を誘導するとバニリン耐性が著しく改善されることを明らかにした。また、ADH7以外にも高濃度バニリン存在下で優先的に翻訳される遺伝子の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要欄に記載した通り、高濃度バニリン存在下でも優先的に翻訳される複数の遺伝子の同定に成功した。また、それらの遺伝子のうち、ADH7のプロモーターを利用することで、任意の遺伝子の発現を高濃度バニリン存在下でも実現することに成功した。これらの研究成果については国際学術誌Front. Microbiol.に発表すると共に、日本生物工学会大会でも報告し、多くの反響を得た。また、現在ADH7以外の優先的に翻訳される遺伝子について論文を投稿中及び投稿準備中であり、計画に沿って順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の遺伝子が高濃度バニリン存在下でも優先的に翻訳されることを明らかにしたが、それらの遺伝子の一部はバニリンだけでなく、フルフラールやHMFといった他のリグノセルロース系バイオマス由来発酵阻害物質存在下でも優先的に翻訳・発現が誘導されることを見出している。そこで、これらの遺伝子のプロモーターを組み合わせて活用し、複数の発酵阻害物質存在下でも酵母の生育や発酵能が維持されるように遺伝子を発現させ、バイオマスからの高効率エタノール生産が可能になるような優良酵母株の育種を行う。
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Research Products
(3 results)