2016 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の法的支援におけるインフォーマル・ネットワークの機能に関する研究
Project/Area Number |
15J08785
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 絢 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢者 / 司法アクセス / 法的支援 / インフォーマルネットワーク / 民生委員 / 地域包括支援センター / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者の法的支援において家族、友人、地域社会といったインフォーマルネットワークが担っている役割および高齢者の法的支援へのアクセス向上の課題を明らかにすることを目的としている。これまでの法社会学の先行研究において、インフォーマルネットワークが司法アクセス向上に寄与しうることが指摘されているが、その実態はあきらかにされていない。本研究は、首都圏の自治体Aにおける高齢者の支援ネットワークを事例としており、平成28年度はとくに民生委員、地域包括支援センターおよび高齢者家族に焦点を当てた。 まず、民生委員に関しては、平成27年2月に実施した自治体Aの全民生委員を対象とした「高齢者の相談・支援に関するアンケート」(回答数198、回収率約52%)の詳細な分析を行った。分析の結果、全体的に民生委員による地域包括支援センターの紹介・連携が多いこと、成年後見や経済的困窮といった相談類型ごとに民生委員が相談者に紹介・連携する機関に特徴が見られること、そして専門性の高い相談は民生委員暦の長い人ほど相談を受けている傾向があることが明らかになった。このことは、相談・紹介機関に関する判断の適切性の問題、民生委員の知名度と相談の有無の関連性を示唆しており、民生委員がフォーマルな機関へと高齢者をつなぐ媒介機関として機能しつつもスムーズなアクセスのためには課題が残されていることが明らかになった。以上の分析結果を中間報告レポートとして自治体Aに提出した。 次に、地域包括支援センター及び高齢者家族に関しては、研究中断終了後のインタビュー・質問紙調査に向け、社会福祉学、老年社会学、家族社会学の研究を精読し、地域包括支援センターや高齢者家族が高齢者の問題への相談・支援において果たしている役割、問題点についての先行研究による指摘を整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究中断前の半年間で、民生委員の質問紙調査の詳細分析及び地域包括支援センター及び高齢者家族を対象とした調査に向けての先行研究の整理を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、地域包括支援センター及び高齢者家族への質問紙調査・インタビュー調査の準備を進め、実施する予定である。さらに、民生委員調査の分析結果を論文としてまとめ、学会誌に投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)