2016 Fiscal Year Annual Research Report
電波シンクロトロン偏光を用いた超新星残骸の磁気乱流の起源と宇宙線加速過程の解明
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15J08894
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
霜田 治朗 青山学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙物理学 / 宇宙線 / 超新星残骸 / 衝撃波 / 星間媒質 |
Outline of Annual Research Achievements |
超新星残骸(以下、SNRと略す)での宇宙線加速過程と被加速粒子の最高エネルギーは現代宇宙物理学最大の謎のひとつである。SNRでの宇宙線加速はSNR衝撃波の運動エネルギーの一部を宇宙線加速に消費することを想定している。標準的な宇宙線加速理論では、これらは磁気乱流の乱流磁場構造に強く依存する。しかし、SNRでの磁場の直接測定が難しいため乱流磁場の特性が最も不定性の大きいパラメーターとなっている。また、これまでの先行研究では高効率な宇宙線加速によりSNRの衝撃波構造や磁場構造が変調するモデルが広く受け入れられている。実際、天球面上のSNRの膨張速度を測定し見積もられる衝撃波速度が予言する下流の温度と実際の下流の温度との差異から評価される宇宙線加速効率は衝撃波構造を変調させるほど強い。しかしながら、この見積もりは天球面上の膨張速度から衝撃波速度を見積もるため、SNRまでの距離を正確に決める必要がある。これは天文観測において最も難しい課題の1つである。また、この標準モデルは最新のX線とガンマ線の観測を同時に説明できないことが明らかとなっており、修正を必要としている。
本研究ではSNRの乱流磁場の特性を電波シンクロトロン偏光観測から測定する手法の開発し、宇宙線の加速過程と達成されるべき最高エネルギーを解明することを目指している。その過程で、米国・ウィスコンシン大学のAlex Lazarian氏との共同研究によりSNRでの乱流磁場のエネルギースペクトル指数をシンクロトロン偏光放射強度の二点相関解析から測定する手法を世界で初めて開発した。また、宇宙線加速効率をSNRまでの距離の不定性なしに測定することを目指し、水素原子輝線の偏光放射モデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではSNRでの宇宙線加速加速過程と到達可能な最高エネルギーの解明のために理解することが不可欠な乱流磁場の特性を、電波シンクロトロン放射の偏光観測から解析することが目標である。SNRでの宇宙線加速の標準モデルでは高効率な宇宙線加速により宇宙線が背景流体に反作用効果を及ぼし、宇宙線自身がプラズマ不安定性を通して磁気乱流を駆動する。この標準モデルは最新のX線とガンマ線の観測を同時に説明できないため、修正を必要としている。また、高効率な宇宙線加速を示唆するこれまでの観測では、天球面上の膨張速度から衝撃波速度を見積もる必要があるので、SNRまでの距離の不定性を解消することが難しい。 当該年度の研究では米国・ウィスコンシン大学のAlex Lazarian氏との共同研究により、電波シンクロトロン偏光放射強度の二点相関解析から乱流磁場のスペクトル指数を測定する手法を世界で初めて開発した。結果は現在論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿中である。また、宇宙線加速に消費された衝撃波の運動エネルギーを測定するため、SNR衝撃波からの水素原子偏光輝線放射の放射モデルを構築した。水素原子輝線の偏光放射は、水素原子に衝突するプラズマ粒子が非等方な速度分布をもつ場合に発せられ、この異方性が強いほど高い偏光度が達成される。SNR衝撃波が宇宙線加速により下流の熱エネルギーを損失した場合、水素原子に衝突するプラズマ粒子の速度分布の異方性が大きくなり、宇宙線を加速していない場合と比べて観測される偏光度が大きくなる。なので、観測された温度と偏光度の関係から宇宙線加速効率を測定することができる。現在、これらの成果は現在論文にまとめている。さらに、すばる望遠鏡による水素原子輝線の偏光観測を中央大学の勝田氏と共同で行い、理論モデルの構築と観測の科学的意義について担当した。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した乱流磁場のスペクトル指数の測定手法を実際のSNRの偏光観測データに適用し、SNRの乱流磁場スペクトル指数を世界で初めて測定する。測定したスペクトル指数からSNRの磁場強度に制限を与え、宇宙線加速過程と達成される最高エネルギーを見積もる。また、既に観測されている水素原子輝線の偏光度から宇宙線加速効率を見積もり、宇宙線が駆動する磁気乱流を評価する。これと観測された磁気乱流のスペクトル指数とを比較し、標準モデルの検証を行う。
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Research Products
(7 results)