2016 Fiscal Year Annual Research Report
電磁気力を用いた軌道制御を実現するための宇宙機の能動帯電手法の研究
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15J08941
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
星 賢人 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙機帯電 / 帯電セイル / 二次電子放出 / 宇宙機帯電シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度10月から行っていた「3次元Full Particle-in-cell法を用いた帯電セイルの推力解析」について英文学術雑誌 Annales Geophysicae への投稿を行った。この論文では、世界で初めて帯電セイルテザー周りの推力解析を三次元で行い、その推力がこれまで予想されていたものより大幅に小さいという結果についてまとめ、更に新しい推力特性を表す推力モデルを提案した。 本年度のもう一つの成果として、「粒子シミュレーション用の新規二次電子放出モデルの提案」を行った。これは、宇宙機帯電コードに二次電子放出現象を実装するにあたり、従来の帯電計算コードで用いられているモデルでは「弾性反射」「後方散乱」「真の二次電子放出」という三種の二次電子放出タイプを区別して取り扱えないという問題があった。そのため、近年提案された「確率的二次電子放出モデル」を実装することを検討したが、事前に実験データとのフィッティングが必要である上に非常にパラメータが多いという問題があり、宇宙機帯電シミュレーションのような実験データが容易には得られない計算方法には不適であったため、その欠点を改善した新しいモデルを提案した。この成果は現在英文学術論文としてIEEE Transaction of Plasma Scienceへ投稿中である。 本年度12月からは、これまでは計算資源の制約からFull PIC法での計算を行うのが難しい地球低軌道での宇宙機帯電計算を解析するため、マルチグリッド法を用いた新規宇宙機帯電解析コードの開発に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでの研究内容を発展させ、2報の英文学術論文を投稿した。1報目は帯電セイルと呼ばれる推進手法の推力について、数値シミュレーションを介して現実的な推力モデルを構築したものであり、宇宙機帯電の側面から帯電セイルにおける物理を考えたものとして非常に大きな成果である。現在投稿中である2報目は、粒子シミュレーション用の新たな二次電子放出モデルを提案するものであり、宇宙機帯電計算のみならず、プラズマと物体の相互作用を計算する場合に汎用的に用いることのできるモデルである。数値シミュレーションによる解析が主となる宇宙期帯電分野において本モデルを用いることで、宇宙機と周辺プラズマの相互作用をより正確に再現することができる。上記の通り、電磁気力を用いた宇宙機軌道制御・推進手法の実現に向けて、実際の工学的応用と、帯電現象自体という2つの側面についてそれぞれ成果をあげており、期待以上の研究の進展があったと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度末から開発を行っているマルチスケール宇宙機帯電計算コードの完成と、それを用いた地球低軌道での宇宙機能動帯電現象の解析について予定している。また、昨年度の成果によって粒子シミュレーション向けの二次電子放出モデルについてもより現実的なモデルとなったため、宇宙機能動帯電における二次電子放出現象の影響についても含めて定量的・定性的にモデル化を行う。 また本研究の締めくくりとして、電磁気力を用いた宇宙機推進システムを運用する上で避けて通れない「太陽電池パネル」等の誘電体部分への影響について数値的に明らかにし、今後の実現に向けた設計指針・放電防止デザインについても検討する予定である。
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Research Products
(3 results)