2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規阻害剤を用いた巨大ATPaseミダシンによるリボソーム生合成の制御機構の解明
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15J09028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青井 勇樹 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | リボソーム生合成 / 阻害剤 / ミダシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ゲノム情報をタンパク質に変換する翻訳装置リボソームが細胞内で生み出される仕組みを解き明かすことを目的とする。核小体から核、細胞質へと時空間的に秩序立ったリボソームの成熟過程において、その制御を司る重要な因子であるミダシンタンパク質の機能を詳細に解析し、以下の成果を得た。 川島茂裕博士(東京大)とTarun Kapoor博士(米ロックフェラー大)と共同で、60Sリボソーム前駆体が成熟する分子メカニズムを解析した。具体的には、分裂酵母ミダシンの新規阻害剤Rbin1を用いて細胞内のミダシンを分単位で阻害し、そのときの60Sリボソーム前駆体の成熟度合いを解析した。ミダシンが核内において60Sリボソーム前駆体からRsa4という制御因子を除去するという出芽酵母の知見と合致して、Rbin1で15分処理した分裂酵母細胞では、核内の60Sリボソーム前駆体と結合しているRsa4のタンパク量が増加した。しかし処理後1時間後には、そのRsa4の量が逆に減少することがわかった。この結果は、分裂酵母ミダシンが関与する成熟過程のステップがRsa4除去のステップのさらに上流にも存在することを示唆する。 Rsa4の除去が起きる核内よりも上流の核小体における成熟過程について解析した結果、Rbin1を30分処理した細胞では、60Sリボソーム前駆体に結合しているRix7やPpp1という制御因子の量が減少することを見出した。この結果は、ミダシンが核小体においてRix7やPpp1と60Sリボソーム前駆体の結合を促進する可能性を示唆する。 以上の結果より、ミダシンは核小体と核内の少なくとも2つのステップにおいて、60Sリボソーム前駆体と制御因子の相互作用を調節するという分子モデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の主な目標であった、阻害剤Rbin1を用いたミダシンの機能解析の研究が進展し、その成果を国際誌で報告できたため、研究は順調に進んだと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の2点に着目した研究を展開する予定である。
(1)ヒトのミダシンの機能を詳細に解析するために、ヒトミダシンの阻害剤を開発する。Rbin1がヒト細胞に対して効果を示さないという予備データをもとに、新規ミダシン阻害剤を探索する。単離される化合物がヒトミダシンの阻害剤であるかをin vitroで検討するとともに、その阻害剤を用いたヒトミダシンの機能を解析する。
(2)本研究の予備実験によりミダシンの制御因子であることが示唆された熱ショックタンパク質HSP70のリボソーム生合成における機能について、詳細に解析する。
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Research Products
(3 results)