2015 Fiscal Year Annual Research Report
福島原発事故下での幼児の遊び環境回復に向けた社会的支援モデルの構築
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15J09072
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 海帆 日本女子大学, 人間生活学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 福島 / 原発事故 / 放射線 / 子ども / 遊び環境 / 生活経営 / 生活ガバナンス / 生活保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、原発事故下での幼児の遊び環境回復に向けた社会的支援モデルを構築することである。平成27年度の計画および具体的な実施内容、意義、重要性は以下の通りである。 1、福島県の保護者が抱える遊び環境へのニーズについての継続調査の実施:2012年に実施した福島県いわき市の未就学児をもつ保護者を対象とした第一次アンケート調査を継続して、今年度は第二次アンケート調査(配布2,208、回収率60.4%)を同地域にて同規模で実施することにより、原発事故後の子どもの遊び環境やニーズの変化を探った。それらの結果は、調査協力者(幼稚園・保育所、保護者など)に戻し終えた。なお、2012年の結果は、2本の論文として投稿し、現在査読中である。これまで、原発事故下での遊び環境についての研究がほとんどなされてきていない中で、5年にわたる遊び環境の制限やニーズを把握することは、必要な支援を考える際の指標となり、復興へと貢献する点からも社会的意義がある。 2、保護者ニーズの視点から、自治体の遊び環境への対応や遊び場運営の仕組みの現状を考察:自治体・NPO・企業へのアンケート・面接調査をもとに、保護者のニーズに合わせて遊び環境の提供がなされるためには、社会的環境からの働きかけによる子育て家庭の「エンパワメント」や子育て家庭の「生活資源コントロール」が必要であることについて考察を行い、最終目標である社会的支援のモデル化に向けて重要な示唆を得た。調査の一部は、紀要論文として発表した。 3、上記の調査結果を組み合わせた「生活ニーズの社会的(資源配分)実現モデル」の構築に向けた考察:子育て家庭のニーズに合わせて社会的資源配分が行われる制度や、行政・NPO・企業の協働による仕組みの構築に向けた予備的分析を予定を繰り上げて進めることができ、「生活ニーズの社会的(資源配分)実現モデル」の発展につながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
福島県の保護者を対象とした第二次アンケート調査では、調査の準備、企画、依頼、実施、結果の分析、調査協力者への結果還元を計画通りに進めた。自治体の遊び環境への対応や遊び場運営の仕組みについての考察を計画通り進めた。さらに、来年度に予定していた計画を繰り上げて、「生活ニーズの社会的(資源配分)実現モデル」の予備的分析を進めることができた。そのため、計画通りに研究を遂行したうえで、当初の計画以上に進展しているものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで概ね計画通りに研究を進められたため、平成28年度も引き続き計画を遂行し、本研究の最終目標である、原発事故下での幼児の遊び環境回復に向けた社会的支援モデルの構築に向けて、これまでの成果をまとめていきたい。 本年度に実施した福島県の保護者を対象とした第二次アンケート調査では、エンパワメントされている保護者や生活資源をコントールしている保護者(たとえば、より多くの情報を持つ人や生活意識の高い人など)ほど、遊び場利用や遊び環境づくりに参加していることが示唆されている。そのため、今後はエンパワメントや生活資源コントロールにも着目したうえで、子育て家庭のニーズに合わせて社会的資源配分が行われる制度や、行政・NPO・企業の協働による仕組みについて考察する。
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Research Products
(1 results)