2016 Fiscal Year Annual Research Report
人種のカテゴリー知覚の個人差に関する認知科学的研究
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15J09108
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 弥世 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 人種のカテゴリー知覚バイアス / COMT遺伝子多型 / 両側腹外側前頭皮質 / 偏見・差別 / 他人種との接触頻度 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに,日本人を対象とした実験から,前頭前野のドーパミン濃度を調整する遺伝子多型の一つとして知られるCOMT遺伝子多型 (rs4680; Catechol-O-methltransferase Val 158 Met polymorphism) が,特定の脳活動を介することで他者の人種のカテゴリーを知覚する際に生じる認知バイアスの個人差を規定する一つの要因になりうることが示唆された。この結果について,the 23rd International Association for Cross-Cultural Psychology (IACCP) にて口頭発表を行った。 上記結果に関連する脳活動の領域は2か所あり,一か所は他者に対するネガティブな評価の抑制に関与する領域 (右側腹外側前頭前野) であった。このことから,日本人は他人種,特にアジア系の人種に対し,差別や偏見を抱いている可能性が示唆されたが,先の実験ではこの可能性について直接的な検討ができなかった。そこで,次の実験で実際に他人種に対し差別や偏見を抱いているのかを検討することとし,この課題を作成するための予備実験を行った。もう一か所は長期記憶の参照に関与する領域 (左側腹外側前頭前野) であった。この結果を受け,記憶の形成に必要な環境要因として,他人種との接触頻度とCOMT遺伝子多型の関連性を検討した結果,COMT遺伝子多型のタイプによって接触頻度の効果が異なることが示唆された。この点について,先の実験ではサンプル数が少ないという限界点があったため,次の実験ではより大規模なサンプルを対象に実験を行うこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年2月初旬,父が末期の胃がんであると宣告され,その後の闘病生活を家族ぐるみで支えるため月の1/3を実家で過ごしていたが,5月末に帰らぬ人となり,葬儀に始まりその他の法要や遺産整理,残された母や祖母のケア等に追われ,自分の精神状態も非常に危うくなったため,細々とした研究活動しか行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,28年度末に作成した実験計画をもとに,これまでの研究の限界点を改善するため,4月~7月にかけて日本人約200名を対象に,近赤外分光法 (fNIRS: functional near-infrared spectroscopy)を用いた脳活動計測及び遺伝子多型解析を含めた実験を行う(実験1)。実験1では,先の研究で示唆されたアジア系の人種に対する差別意識について,潜在的及び顕在的な観点から測定する課題・質問紙を実験内容に盛り込む。 その後,実験1で得られた結果について,環境要因である他人種との接触頻度をより詳細に検討するため,他人種国家を標榜し日常的に自分とは異なる人種の人達と接している海外の国との比較研究を行う (実験2)。実験2で用いる刺激や教示の英訳,並びに海外の共同研究機関と調整は実験1の実施と並行して行うこととし,7月中旬に渡航,外国人約200名を対象に実験2を行う。 実験1及び実験2の研究計画立案,実験の実施,データ解析,並びに得られたデータを基にした論文の作成は,申請者が主に行うこととする。更に,実験1及び2と並行して,これまでに得られたデータに基づいて作成した論文の投稿を行う。 実験1及び2は上半期に終了させ,下半期は博士論文を含めた論文の執筆作業に入ることとする。
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Research Products
(2 results)