2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J09132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 弓 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 記憶 / 日中戦争 / 対日協力 / 語り / コミュニティ / オーラルヒストリー / 歴史 / 集合的記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
■フィールド調査 1)2015年4月1~6日に、中国山西省盂県農村部で雨乞い活動の復活についての調査を行い、①中華人民共和国期の雨乞い、②文革期の雨乞い禁止の状況、③80年代の雨乞い復活を中心にインタビューを行った。文革期に雨乞いと共に「迷信」として禁止されていた「神婆」(神降ろし)の復活についても「神婆」本人への聞き取り調査を行った。2)9月4~9日に、①盂県全全体で2000年間続いた雨乞いの伝統や伝説の中心地である「蔵山」のフィールド調査、②蔵山と同様だが小規模の雨乞いコミュニティを形成してきた南社村、③南社と雨乞いの神像を共有した村々及び④それらの村々と「神親」(神の親戚)関係にある陽曲県の宴村での調査を行った。3)9月10~13日には北京国家図書館での資料調査を行い、主に蔵山の雨乞いに関する資料を収集した。4)2月22~29日には盂県で追加の調査を行い、山西大学で歴史学研究者との研究交流及び資料収集を行った。調査を通して、大王像の移動によって形成される、盂県の雨乞いコミュニティの全体像を把握した。 ■論文執筆及び口頭発表 上記調査に伴い、書評1本及び、論文4本の執筆を行った。また、口頭発表として、7月に東京大学におけるプリンストン大学サマーセミナーでの講演及び、11月5~8日に韓国漢陽大学で開かれた国際学会での発表を行った。論文「中国華北農村のレジリエンス」では、「レジリエンス」という概念をもとに、雨乞いを分析し、中国農村において、政治的なネットワークとは別に成り立つ信仰のネットワークが、中心と周縁の相互交換によって維持されてきたことを明らかにした。 ■その他 カナダオーラルヒストリー学会機関紙であるOral History Forum d' Histoire oraleにおける特集号Generations and Memoryの編集を担当し、2016年度に発刊予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学振PDという立場で集中的に調査及び論文執筆を行うことができた。本年度執筆した4本の論文は、いずれも質量ともに高い水準を保持することができた。特に「中国華北農村のレジリエンス」では、歴史としての「レジリエンス」(回復力)というキー概念によって、雨乞いのコミュニティの在り方を再検討することができ、今後の調査研究の可能性を広げた。ただし、計画していた大王廟会への参加は、先方との連絡や日程調整に問題があり実現しなかったこと、英語圏での学会発表を行うことができなかったために、進捗は「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
盂県における雨乞いの基礎的な調査が終了した段階であることから、それらの調査記録を整理し、問題点や検討すべき点をまとめ、学会発表を行う。それと並行して、北京国家図書館での資料収集及び、現地での資料の発掘によって、資料面での理解を深める。 フィールドワークを継続し、本年度は廟会に参加し、大王像がいかなる形でコミュニティを巡回するのか、大王像の巡回と村人たちがいかなる関係を持っているのかについて、参与観察を行う。
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