2016 Fiscal Year Annual Research Report
「ならず者国家」の行動に対する強制と誘導:威嚇・約束の説得力と国際合意を巡る相克
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15J09146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田沼 彬文 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 国際秩序 / ならず者国家 / 武力行使の威嚇 / 国際社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1)問題の定位,(2)事例の範囲の特定,(3)仮説の精緻化と検証を計画に挙げた。 (1)および(2)は,研究対象の位置づけおよび外延の画定に関わる問題である。歴史的に見て,国家のある種の対外政策や,あるいは国内の政策・政情を,国際秩序との関係において評価し,そこに何らかのレッテルを付して取り扱うという現象は,何も「ならず者国家」に限られるものではない。むしろ国際政治において,そうした試みは数多く行われてきた。本研究課題も,そうした広い文脈の中に位置付けることのできる問題だと言えるだろう。 したがって,(3)で挙げた仮説の精緻化・検証の前提となるべき作業が未だ残っている。すなわち,そもそも歴史的に見て,国際秩序は多様な国家の包摂・排除をめぐっていかなる課題を抱えてきたのか,またそうした国家群に対しては従来いかなる対処法が試みられてきたのか。こうした点を今一度,理論的にかつ包括的に整理しなおすことの重要性が明らかになった。そのうえで,包括的な現象群のうちのどこまでを,本研究と直接的に関連づけて考察対象に組み込むべきかについては,来年度も引き続き検討する必要が残った。 研究期間の開始後に当面閉鎖となった米国のConflict Records Research Centerは,本年度も運営を再開しなかったため,本年度は一次資料調査を行わないこととし,国内での二次資料調査を行うにとどまった。 成果の公表について言えば,本年度はこれまでの研究成果の中間的なまとめとして,「武力行使の威嚇と国際合意――湾岸戦争・イラク戦争を事例に」と題する報告を日本国際政治学会研究大会にて行った(10月)。ここでの報告内容は,(3)の仮説の,現時点で利用可能な資料に基づく暫定的な検証にとどまるものではあるが,来年度(平成29年度)中の掲載を目指して『国際政治』への投稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上に挙げた(1)問題の定位,(2)事例の範囲の特定,(3)仮説の精緻化と検証のいずれについても,未解明の点が残っているため,本年度分の計画がすべて完了したと言うことはできない。しかしながら,いずれについても一定の成果を得ることができ,また学会報告を経て研究内容の一層の深化,ならびに公表への見通しも立ってきたことから,このように評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
国際社会・国際秩序をめぐる幅広い歴史的経緯の全体像を踏まえたうえで,「ならず者国家」の排除・包摂という本研究課題の直接の検討対象の,一般性または特殊性がどのように位置づけられるのかを解明することが急務である。この作業は,研究遂行の最終年度にあたって,実証的な知見をまとめ,本研究の意義や含意を明示するためにも必要不可欠である。
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Research Products
(1 results)