2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J09200
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 伸裕 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 窒素欠乏 / 開花期 / イネ / GWAS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において申請者は、栄養欠乏条件におけるイネの開花促進機構の解明を目指して研究を行った。事前の実験により、イネにおいては窒素、リン酸、カリウムの3大栄養素の中で、窒素欠乏条件でのみ出穂期の促進が観察されたため、研究開始1年目に通常条件、窒素欠乏条件で198系統のイネ品種を栽培し、それぞれの品種の開花期の促進日数の測定を行った。この198品種は名古屋大学との共同研究で分与していただいた系統で、イネの酒米品種、日本の栽培イネのコアコレクションであるJRCから成る集団である。本集団は既に次世代シーケンサーによってゲノム情報が取得されており、このゲノム情報から得られたSNP情報と表現型データを用いることでGWAS (Genome Wide Association Study)解析が可能である。このGWASで得られる候補遺伝子は、窒素欠乏に応答して、出穂期を促進する機能を持つと予想される (研究1)。また窒素欠乏における出穂期の促進は、既知の開花関連遺伝子の制御機構と一部overlapしていることが予想されるため、窒素欠乏条件の開花促進に関わる、既知の開花関連遺伝子の同定も目指す (研究2)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用研究の2年度にあたる平成28年度は、GWASのためのイネ198品種の出穂期データを再度取得し、2年間で非常に強い相関 (r>0.9)を示した。そのため27年度に明らかにした、窒素欠乏条件における出穂期促進に関わる遺伝子の座上領域は、かなり信頼度が高いと言える。28年度はこの候補領域の中から、原因として考えられる4遺伝子について、crispr/cas9システムを用いた機能欠損体を作成し、出穂期の調査を行っている。また、既知の開花促進遺伝子の中で、ある2遺伝子が窒素欠乏条件に応答して発現が上昇していることも示した。以上の結果から、窒素欠乏条件による出穂期の促進メカニズムの一端を明らかにし、さらに窒素欠乏に応答して、開花関連遺伝子の発現を正に制御する新規遺伝子の同定を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素欠乏条件において開花期を制御する開花促進因子として、Ehd1とHd3aを同定したため、今年度はこれらの遺伝子の機能欠損変異体を用いて、窒素欠乏における開花期の促進が起こらないかどうかを調査する。 また、GWASによって窒素欠乏に応答して、開花期の促進を制御する候補遺伝子を同定したため、これらの遺伝子の機能欠損株を作成し、窒素欠乏条件下での開花の促進程度を調査する。 GWASを行った結果、窒素欠乏条件で二週間近く開花が促進する品種と、全くしない品種を同定できたため、これら2品種の交配によって得られたF2集団を、窒素欠乏条件下で栽培し、開花促進日数を表現型データとしたQTL解析を行う。このQTL解析によって、GWASと同様に窒素欠乏に応答して、開花期の促進を制御する候補遺伝子 の同定を目指す。
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