2015 Fiscal Year Annual Research Report
生体深部の分子挙動を無染色可視化する誘導ラマン散乱顕微鏡開発と薬物機能評価
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15J09208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 祐太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 光イメージング / 高速イメージング / ケミカルイメージング / 生体イメージング / 高速化 / ラベルフリー / 誘導ラマン散乱顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、次の二つの成果を得た。(i)従来の誘導ラマン散乱(SRS)顕微鏡の動作を高速化した。(ii)高速なマルチカラーイメージングシステムの構築を行った。 これら成果はミリ秒オーダーで変化する生体内光散乱状態を高速に補正するために必要な第一歩である。光散乱補正のためには、従来、大量の入射光モード生成、及びそれぞれの入射モードに対するフィードバック信号計測に長時間(数秒から数時間)を要する。特に、SRS顕微鏡に光散乱補正技術を適用するには、多波長の光に対して空間モードの制御を行う必要が伴うため、SRS顕微鏡の高速化は重要な課題である。そこで前年度の成果(i)として、観測する化学成分のスペクトル点数の最適化・視野の最適化を行って従来の30fpsを110fpsまで向上し、これによりケミカルイメージング速度を83倍向上した。本結果は論文に投稿しMinor revisionを進めている状況である。更に、前年度の成果(ii)として、パルス毎の波長制御が可能な波長可変機構を構築し、マルチカラーSRS顕微鏡における色切り替えスピードを、従来の1 ms/colorから52 ns/colorにまで大幅に改善した。これにより、動く生体試料を24 kHz/lineで可視化できるようになった。今後本技術の新規応用として高速な多細胞計測・解析を実践し、早期論文投稿を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、マルチカラー誘導ラマン散乱(SRS)顕微鏡に、生体内部の光散乱を抑制する補正波面を適用し、これまで観察することの難しかった生体深部における分子の挙動をラベルフリーに観察する事が目的である。当初の研究計画では、次の課題(I-III)に年度毎に取り組む予定であった。(I)従来よりも数桁程度の高速動作が可能なSRS顕微鏡の構築。(II)補正波面による散乱媒質深部SRS信号強度向上。(III)SRS顕微像取得による生体深部ケミカル情報可視化。 上記研究計画を設定してから1年が経ち、その結果、従来のSRS顕微鏡の30 fpsを110 fpsに向上しケミカルイメージングの83倍の可視化速度向上を実現した。本結果は論文に投稿しMinor revisionを進めている状況である。更にマルチカラーSRS顕微鏡における波長切り替え速度を20倍以上の高速化に成功した。従って、前年度の計画であった課題(I)の高速動作が可能なSRS顕微鏡を達成できたと思われる。 SRS顕微鏡の高速化に成功したことで、従来に比べ遥かに高性能なフローサイトメトリーという非常に高インパクトであろう新しいSRS応用の可能性が拓けた。既に研究をこの方向性にシフトしつつあり、並行して生体深部集光の研究も進めている状況である。このように魅力的な応用が新しく見つかったことで、今暫く課題(I)の延長である更なる高速化を進めつつ、当初の予定に沿った研究も同時に進めていく予定である。 以上の通り、研究計画に沿った成果が得られた上、魅力的な応用の方向性も新しく見つかっており、最初に計画した以上の成果が得られたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
高速SRSフローサイトメトリーという高インパクトなSRS応用の方向性が見つかった事を踏まえ、本年度では、課題(I)の延長である更なる高速化に重きをおきつつ、同時に当初の予定に沿った研究も同時に進めていく。 更なるSRS顕微鏡の高速化の為に、従来の集光スポットのメカニカルな走査ではなく、ライン集光を行って複数画素のSRS信号を一括取得し、従来の信号取得速度を数十倍程度高速化する。そのためにはフィルタ回路、アナログ-ディジタル変換回路等を丁寧に設計・製作する必要がある。また、現在の光パワーを数十倍増幅する必要がある。これらの課題に本年度は取り組む。 並行して、構築した高速SRS顕微鏡に光散乱補正機構を導入して生体深部よりのSRS信号向上を図る。課題(I)で構築した高速SRS顕微鏡を用いることで、補正波面の取得が高速に行え、生体内部の光散乱特性が変わる前にSRS信号取得が行えると期待できる。そのために、まずは異なるスペクトル要素に対する光散乱情報の高速取得を行い、補正波面の高速取得を実現する。そして補正波面利用により、まずは擦りガラス等の薄い散乱媒質試料より、更に生体内部よりのSRS信号の向上を確認する。
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Research Products
(2 results)