2015 Fiscal Year Annual Research Report
土壌微生物によるプライミング効果促進機構の解明と低施肥栽培への応用
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15J09217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 智恵 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | プライミング効果 / 窒素・リンマイニング / 堆肥連用圃場 / 同位体トレーサー法 / SIP法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、易分解性有機物の添加による難分解性土壌有機物の分解促進効果(プライミング効果)を応用した低施肥栽培の技術化を目指し、北海道の堆肥連用圃場の土壌を用いて、①プライミング効果による難分解性有機物からの窒素・リン放出の検証、②プライミング効果を引き起こす微生物の群集構造およびメカニズムの解明、③栽培試験による技術化の検証を行う。 平成27年度は、根釧農業試験場の採草地土壌および林地土壌より土壌サンプルを採取し、1)13Cトレーサー法をを用いて易分解性有機物の施用量がプライミング効果とその持続時間に及ぼす影響、および、2)供試土壌の微生物群集構造について調べた。 1)13C標識グルコースを異なる濃度で添加・培養することにより、①採草地土壌では林地土壌と異なり、全ての添加濃度において正のプライミング効果(難分解性土壌有機物の分解促進効果)が生じたこと、②プライミング効果は林地土壌より採草地土壌で大きかったこと、③いずれの土壌種・添加濃度においてもプライミング効果は培養中期以降から増大し、約1か月後まで効果が続いたこと、④グルコース添加濃度に対し、林地土壌ではプライミング効果の頭打ちが見られたが、採草地土壌ではプライミング効果が増大することが明らかとなった。尚、13C標識セルロースによる長期培養試験も現在進行中である。 2)脂肪酸の組成に基づき、真菌比は林地土壌より採草地土壌で高いことがわかった。真菌は難分解性土壌有機物を分解する細胞外酵素の生産量がバクテリアに比べて多いことから、真菌量がプライミング効果の大きさに影響を及ぼしている可能性がある。また、1)の結果③より、培養中期のプライミング効果の増大は微生物群集構造の変化が関わっていることが考えられる。微生物群集構造の変化については、培養土壌から抽出したDNAを用いて、アンプリコンシーケンスおよびSIP法により詳細に解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、現場の長期堆肥連用圃場から採取した土壌サンプルを用いて、13Cトレーサー法による培養試験を行い、易分解性有機物の施用量がプライミング効果とその持続時間に及ぼす影響、およびプライミング効果が土壌炭素収支について調べる予定であった。採取した土壌の理化学性について測定を行った他、13C標識グルコースによる培養試験も予定通り実施し、現在は13C標識セルロースを用いた長期培養試験を進行中である。また、次年度に予定している土壌DNAによる微生物群集構造の解析のため、供試土壌からのDNA抽出方法についても先行して検討を行った。 平成27年度の研究成果については、地球惑星連合大会、日本土壌肥料学会、日本生態学会、International Symposium on Soil Organic Matter等において発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度より続けている13C標識セルロースの長期培養試験を行い、プライミング効果が難分解性土壌有機物からの窒素・リン放出速度に及ぼす影響についても調べる予定である。また、SIP法および次世代シーケンサーを用いて微生物の群集構造を解析し、プライミング効果に関わる微生物群集の特定にも取り組む。
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Research Products
(5 results)