2016 Fiscal Year Annual Research Report
土壌微生物によるプライミング効果促進機構の解明と低施肥栽培への応用
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15J09217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 智恵 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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Keywords | プライミング効果 / 窒素・リンマイニング / 堆肥連用圃場 / 同位体トレーサー法 / SIP法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、昨年度に実施したプライミング効果の培養実験の結果に基づき、同じ土壌(採草地・林地の表層土壌)・培養条件で13-C標識有機物を添加・培養し、プライミング効果の発現と土壌微生物群集構造の関係について調べた。クロロホルム燻蒸抽出法による土壌微生物バイオマスの全炭素・窒素量を測定、IRMSを用いた土壌微生物バイオマスの炭素同位体比の測定、および抽出した土壌DNAを用いた16S rRNA遺伝子(バクテリア)と18S rRNA遺伝子(真菌)の定量PCRによる測定を行った。 培養初期には16S, 18S rRNA遺伝子共に、易分解性有機物の添加濃度が高くなるにつれて増加する傾向が見られ、バクテリア・真菌共に易分解性有機物の添加によって微生物バイオマスが増加したことが確認された。しかし、16S rRNA遺伝子は培養中期から減少傾向であったのに対し、18S rRNA遺伝子は培養中期も概ね維持または増加する傾向が見られ、バクテリアと真菌では培養中のバイオマスの変化が異なることがわかった。また、真菌比(16S/18S)は、採草地・林地土壌共に、培養時間と共に低下し、土壌微生物群集に占める真菌の割合が高くなる傾向を示した。 尚、土壌微生物バイオマスの全炭素・窒素量、および炭素同位体比についてはデータを解析中である。また、今後、アンプリコンシーケンスやSIP法による詳細な微生物群集構造の解析を予定している。これらの結果を併せて、プライミング効果と微生物群集構造の関係について解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
産休・育休のため研究中断となったが、予定していた実験は順調に進めることができた。データの詳細な解析やその他の実験については、復帰後に再開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
産休・育休による研究中断からの復帰後に、SIP法および次世代シーケンサーを用いてより詳細に土壌微生物の群集構造を解析し、プライミング効果に関わる微生物群集の特定に取り組む。また、供試土壌の種類を加えて13C標識セルロースの長期培養試験を行い、プライミング効果が難分解性土壌有機物からの窒素・リン放出速度に及ぼす影響についても引き続き調べる予定である。
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