2016 Fiscal Year Annual Research Report
マレーシアにおけるイスラーム金融紛争処理制度の研究―その特徴とグローバルな汎用性
Project/Area Number |
15J09218
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川村 藍 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | イスラーム金融 / 民事紛争処理制度 / 比較法 / イスラーム法 / イスラーム世界研究 / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年8月、イスラーム金融をめぐる民事紛争処理制度の実態について、英国で開催された国際会議とワークショップにおいて、専門家や実務家から聞取り調査や情報収集を実施した。この情報収集から、イスラーム金融をめぐる民事紛争を裁判所で処理することから、裁判外紛争処理制度(ADR)を利用することが学術的に議論されている。その一方で、実務では制度が整っていないことに加え、費用や効率性の側面から裁判制度が活用されている実態が明らかになった。これまでの研究で、理論構築してきた新たなイスラーム金融の紛争処理制度である「ドバイ・アプローチ」や「マレーシア・モデル」に関して研究発表する機会に恵まれた。国際会議やワークショップでの発表を通じて、政治経済学の観点から「ドバイ・アプローチ」や「マレーシア・モデル」を分析する新たな視座を得ることができた。 イギリスの研究協力者との交流を通じて、昨年度までの研究成果で得たイスラーム金融の民事紛争処理制度モデルである「ドバイ・アプローチ」及び「マレーシア・モデル」の汎用性を検証する手法として、政治経済学に関する助言をダラム大学及びケンブリッジ大学での国際会議で得ることができた。イギリスでの研究成果は、ケンブリッジ大学湾岸研究会議が発行する論文集に収録することが決定した。 平成28年度はダラム大学での国際ワークショップとケンブリッジ大学湾岸研究会議での発表内容を、ケンブリッジ大学湾岸研究会議が出版する論文集に収録されることが内定した。また、日本語の論文として『中東研究』に論文を執筆する機会に恵まれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の調査結果により、英国などで開催された国際学会や研究会において研究発表を実施し、イスラーム金融をめぐる民事紛争処理の理論的な研究の発展に繋がった。イギリスの研究協力者との交流を通じて、昨年度までの研究成果で得たイスラーム金融の民事紛争処理制度モデルである「ドバイ・アプローチ」及び「マレーシア・モデル」の汎用性を検証する手法として、政治経済学に関する助言をダラム大学教授及びケンブリッジ大学での国際会議の参加者から得ることができた。 平成28年度はダラム大学での国際ワークショップとケンブリッジ大学湾岸研究会議での発表内容を、ケンブリッジ大学湾岸研究会議が出版する論文集に収録されることが内定した。また、日本語の論文として『中東研究』に論文を執筆する機会に恵まれたことからおおむね順調に研究活動が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
グローバル社会において、時代の変遷に合わせて多元的な法体制が構築され、イスラーム世界ではイスラームの理念を体現すべく新たな法秩序が形成されている。その最たる例が、イスラーム金融である。イスラーム金融は、イスラーム世界の経済体制がイスラームの理念から乖離している危機感から登場した。イスラーム経済学から発展し、商業実践としてイスラーム金融がイスラーム世界に取り入れられるに従って、特別法が制定されたり、ガイドラインが発行されたりし、それまで西欧法を継受した法制度が中心であった経済法分野にイスラーム法による新たな「法制度パラダイム」が創出されようとしている。 今後の研究の推進方策として、イスラーム金融をめぐる民事紛争処理制度をひとつの事例とし、現代のイスラーム法が国際社会において社会的課題にどのように取り組んでいるのか明らかにしていく。イスラーム金融やイスラーム経済では、持続可能な社会を実現するために金融や経済に留まらず、多くのイスラーム教徒が当事者となったグローバルな課題をはじめ、ジェンダー、医療、環境に関する解決策をイスラームの立場から様々な対策に取り組んでいる。このことから、これまでの研究を事例に新たな法制度のパラダイムについて追求し、これまでの研究を次の次元へ昇華することを目的とする。
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Research Products
(6 results)