2015 Fiscal Year Annual Research Report
冷却Fermi気体を用いた強相関Fermi多体系の熱力学的性質の実験的探求
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15J09249
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池町 拓也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 冷却原子気体 / 吸収イメージング / 原子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷却原子気体の実験では、吸収イメージングによってトラップ中の原子の密度分布を見積もることが重要となる。吸収イメージングでは透過率の空間分布をCCDカメラを用いて測定し、それを吸収断面積で割ることによって原子の密度分布を得ることができる。特に本研究においては、状態方程式決定のため密度分布の絶対値を評価する必要がある。 初年度の研究では、吸収イメージングにおいてトラップ中の高密度原子の測定には吸収量が大きいことを考慮に入れる必要があることを明らかにした。またそのような状況ではプローブ光強度を強くすることが信号ノイズ比を確保する上で重要であること、そして一方で強いプローブ光を用いた場合、光の反跳による原子の加速が無視できなくなりうることを解明した。その上で最適なプローブ条件を実験的に求め、またそこから原子の密度分布を求めることに成功した。この成果は共同研究者と論文にまとめる作業を進めている。 まず、極低温のユニタリーガスのin-situ吸収イメージングにおいて, 密度の高いトラップ中心部でODが真の値に比べ低く出ていることを示した。これはトラップ中心付近において密度が高いため原子の吸収が大きく, 原子に吸収されないプローブ光成分である迷光の影響が無視できなくなるためである。従って迷光の影響を抑えるため、トラップ中原子の密度分布を評価する際は十分に強いプローブ光を用いる必要がある。 一方、強いプローブ光を用いて吸収イメージングを行うと、プローブ光照射時間が長くなるにつれて原子の吸収断面積が減少することがわかった。これは主に吸収の際に原子が光子から受ける反跳によるドップラーシフトが原因である。これを抑えるため、プローブ光照射時間は吸収断面積の変化が無視できる範囲に取る必要がある。以上の条件を考慮し、原子の密度分布を正確に得るための条件を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では初年度にイメージングの最適化を終えることが目標だった。初年度はこの目標を達成する成果をあげることに成功し、計画を順調に進められている。それに加え、実験系の整備も大幅に進み、初年度の目標を超えるところまで進捗があった。よって、この自己評価とする。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に達成した結果を基に、精密な測定を行って熱力学関数の測定に移る。既に先行研究では熱力学関数がある相互作用領域で求められているが、それをBCS‐BECクロスオーバー全域に拡張する。それに加え、得られた熱力学関数を解析し、超流動転移温度・臨界指数を相互作用の関数として求める。これらによって、普遍的な熱力学が明らかにされることが期待される。 また、初年度の副産物として、全光学的手法によるフェルミ気体ボーズ気体混合長流動体が実現されている。このような系は現在世界的に見ても珍しく、特に全光学的手法という観点から見ると世界初の系である。この成果を論文にまとめるとともに、この系を利用して混合長流動系の研究をすすめることも視野に入れる。
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