2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J09301
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
永岡 崇 佛教大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 民衆宗教 / 総力戦 / 占領期 / GHQ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず国会図書館がマイクロフィッシュの形態で収集を行っている、GHQの民間情報教育局資料を閲覧し、占領期におけるさまざまな宗教集団の活動、またGHQにあてられた宗教指導者や信者らの書簡などをもとに、当時の民衆宗教がどのように分布し、どのような実践を行っていたかを目録としてまとめる作業を行った。他方で、プランゲ文庫の占領期雑誌調査も行い、創価学会や世界救世教、大乗報恩会といった、戦時期から占領期にかけての民衆宗教機関誌の収集・整理・分析を行い、個別集団の活動を掘り下げていくかたちで、1940年代民衆宗教の実態を解明しつつある。 つぎに、解放後の朝鮮半島における民衆宗教の動向を調査するための基礎作業として、アメリカ国立公文書館所蔵の在朝鮮アメリカ陸軍司令部軍政庁資料の調査を行った。大韓民国建国前の宗教政策にかかわる行政文書を収集し、日本の事例と対照させながら民衆宗教の展開を把握するための足がかりを築くことができた。 昨年度に刊行した単著『新宗教と総力戦』において、天理教の「いざ・ひのきしん隊」の活動についての分析を行った。信者によって構成された「いざ・ひのきしん隊」は、戦時期に全国の炭鉱に入り、総力戦体制遂行のための石炭増産活動に従事した。今年度はこの問題をさらに掘り下げるべく、天理教の地方教会に残された「いざ・ひのきしん隊」隊員の手記を探索し、その分析を行った。炭鉱で朝鮮人や中国人の労働者と出会うことで、隊員には帝国の差別構造への直面、戦争空間の不条理への気づきもあった一方で、その出会い方は宗教的普遍性の意識による救済者としてのものでしかなく、マイノリティの位置からの連帯や差別構造への問い直しにはつながらないものだったことを明らかにした。 これらの作業を通じて、1940年代の民衆宗教についての概観的把握と、その思想性についての検討作業を前進させることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度の作業を継続させて、1940年代の民衆宗教の概観的把握・個別研究ともに推進させることができた。また、解放後の朝鮮半島の宗教政策についての資料調査を行い、日本の事例と対照させながら民衆宗教の展開を把握するための足がかりを築くことができたのも重要な成果であった。研究課題に照らして、おおむね順調に進展しているといえるが、最終年度となる来年度は、これらの調査成果を総合させて、1940年代民衆宗教の歴史的意義を明らかにすることが課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
国会図書館に所蔵されている特高警察およびGHQの宗教調査資料、プランゲ文庫の雑誌などの調査を行い、1940年代民衆宗教の概観的把握と個別事例調査の両面から作業を行っていく。同時に、当時の宗教政策や社会意識についての諸研究を批判的に検討して、民衆宗教と社会との接点や齟齬・葛藤のありようを明らかにする。 さらに、それらの成果を朝鮮半島の宗教状況、また他の文化領域とのかかわりからとらえなおすことによって、1940年代の宗教・文化構造のなかの民衆宗教の位置づけを探り、研究課題を達成する。
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Research Products
(11 results)