2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J09303
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
申 惠媛 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | エスニック空間 / 移民研究 / 都市社会学 / 多文化共生 / 地域社会 / 移動と定着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、移民の更なる流動化・多様化に伴い、彼らのホスト社会における適応・生活の様式(「共生」を含む)がどのように変容しているのかを、移民が形成・関与する空間に注目して探ることである。以下は、これに向けた本年度の研究内容および発表状況である。 (1)理論枠組みの設定・事例調査 本年度は、これまで取り組んできた「大久保/新大久保」地域を中心とする事例研究を考察するための理論的な枠組みの設定を主な目標とし、その一つとして日本における移民研究と都市社会学の「移動」を媒介とした接点を探ってきた。具体的には、これまで移民を対象とする移民研究や(主に都市の)外国人集住地域を対象とする諸研究において「定着/移動」という区分が「日本人/外国人」という区分と結びつく傾向が見られてきたことに対し、「大久保/新大久保」地域のように観光客やメディアといった地域「外」から来訪し消費活動を行う層も地域空間の形成に関与する事例の場合、様々な移動のあり方を組み込んだ新たな分析枠組みが必要であることを示した。このような観点に基づき、本年度は、①「大久保/新大久保」地域のような事例を多様な移動が重なって形成された空間として見る視座を示し、②地域社会における移動の増大および多様化という変化を反映した「共生」概念の再考を試みた。 事例調査に関しては、本年度は昨年度に引き続き「大久保/新大久保」地域を中心とする国内外の事例の(予備)調査を行った。これを通じて、昨年度に指摘した与件としての環境・制度の影響に加え、各事例が持つ交通網や消費施設といった物理的条件や、ナショナルなレベルでの「多文化」の語り方の影響に注目する必要性を見出した。 (2)研究発表 本年度は、昨年度より進めてきた調査研究の成果を論文にまとめ(『年報社会学論集』第29号、『相関社会科学』第26号)、また(1)における考察の一部を国際学会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、理論枠組みの設定という側面においては、本年度の目標として挙げていた移民研究と地域・都市社会学の接続について考察を深めることができ、さらにその一部を国際学会での発表という形でまとめることができた。一方、事例調査については国内外事例の(予備)調査および事例に関する文献調査を進めているが、本年度の目標としていた地理的・歴史的により広範囲な調査には至らず、本年度進めた予備調査・文献調査を踏まえて調査設計を再構成する必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度の予備調査・文献調査を踏まえて調査設計を再構成し、これに基づいた国内外の事例調査を進めると同時に、本年度考察を深めてきた理論枠組みを踏まえた分析を行う。これを通じて、「大久保/新大久保」地域の事例が従来の移民研究や地域・都市社会学においてどのように位置づけられるのか、またどのように両者の新たな接続項となりうるのかについて考察を深めることを目指す。そのために、昨年度までの研究を踏まえ、日本の都市における移民や外国人集住地、エスニック・タウンを対象としてきた諸研究との関係について検討する。
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Research Products
(3 results)