2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物におけるエチレンガス感知機構の構造生物学的研究
Project/Area Number |
15J09304
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
北西 健一 茨城大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD) (90815482)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 鉄 / 酸素 / センサー / ヒスチジンキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、微生物のゲノム中にヘムエリスリンを酸素結合部位として持つ、全く新しい酸素センサーヒスチジンキナーゼを同定することに成功した。この遺伝子は当初、機能が未知であったが、そのアミノ酸配列を調べたところ、N末端側にヘムエリスリンドメインを、C末端側にヒスチジンキナーゼドメインを持つことがわかった。ヘムエリスリンは、もともと海洋無脊椎動物の酸素運搬タンパク質として知られているが、近年、微生物がヘムエリスリンを酸素(及び、酸化還元)を感知するためのセンサードメインとして利用していることが明らかとなってきた。そこで、このタンパク質をBhr-HK (Bacterial hemerythrin Histidine Kinaseの略)と名付けた。Bhr-HKタンパク質の大量発現系、及び精製法を確立させた。そして、精製タンパク質の構造機能相関について詳細に調べた。精製されたBhr-HKは、ヘムではなく、鉄二核中心を持ち、黄色のタンパク質として得られ、自己リン酸化活性を示した。Bhr-HKは、センサードメインに存在する鉄二核中心の酸化還元変化によって、自己リン酸化活性を制御していることが示唆された。したがって、Bhr-HKは酸素の結合(または、外界の酸化還元変化)に伴い、酵素活性が上昇するという新しいタイプのセンサーヒスチジンキナーゼであることが明らかとなった。これらの結果は、将来的には病原菌に対する治療に応用できる重要な情報を含む可能性があり、多剤耐性菌の撲滅などにも貢献できる可能性があるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、新たに同定した二成分情報伝達系のヒスチジンキナーゼとレスポンスレギュレーターについて、精製タンパク質の大量調製法を確立できた。ヒスチジンキナーゼに関しては、嫌気条件下での吸収スペクトルの測定や自己リン酸化の活性測定系を確立できた。また、X線結晶構造解析に向け、予備的な結晶を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、新規に同定した二成分情報伝達系の構造機能相関研究を行う。この二成分情報伝達系は全体として、外界環境の酸素濃度や酸化還元の変化に応答して、微生物の形態を制御するシステムである可能性がある。ヒスチジンキナーゼに関しては、初期的なキャラクタリゼーションは完了しているので、今後はレスポンスレギュレーターについて、重点的に研究を行っていく。そして、この新規の二成分情報伝達系の生理的意義について、分子レベルでの解明を目指す。また、これまでに得られたタンパク質の結晶は微小かつ針状であり、良いX線回折データが得られなかったので、今後さらに結晶化条件の最適化、または結晶化スクリーニングを徹底して行い、構造解析に適したより良質な結晶の作製を目指す。得られた結晶を用いて、放射光施設でのX線回折データの収集を目指す。
|
Research Products
(3 results)