2015 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性スピン集団を用いた量子インターフェイスの開発
Project/Area Number |
15J09502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久富 隆佑 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 量子情報 / スピントロニクス / 磁気光学効果 / 強磁性共鳴 / 磁性 / 量子インターフェイス |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性スピン集団を用いた光とマイクロ波間での量子トランスデューサの実現には、強磁性スピン集団と両電磁波との間でのコヒーレントな相互作用を利用する必要がある。マイクロ波と強磁性スピン集団とは「強磁性共鳴(FMR)」を用いて、また光と強磁性スピン集団とは「ファラデー相互作用」を用いることにより実現できると考えた。平成27年度の前半では強磁性体イットリウム鉄ガーネット(YIG)の球状試料を用いることにより通信波長帯の光とマイクロ波間での双方向信号変換を実現した。この成果をまとめた論文は現在査読付き雑誌に投稿中である。
この強磁性スピン集団を媒介とする手法によって量子極限での信号変換(例えば単一光子の変換)を実現するには、変換効率の改善が鍵となる。YIGを用いた光-マイクロ波変換の変換効率に制限を与えているのはYIG中のスピンと光の間でのファラデー相互作用の弱さにあることを、我々は明らかにしている。ファラデー相互作用の強弱は物質中の磁性イオンのもつ遷移周波数と相互作用する光の周波数との離調の大きさに露わに依存することが知られており、吸収が問題にならない程度に離調を小さくした方が強くなる。これまで用いてきたYIG中の鉄イオンの遷移周波数と通信波長帯の光の周波数の離調の大きさは、500テラヘルツ程度と非常に大きい。そこで、YIGを構成する元素の一つであるイットリウム原子を通信波長帯に電子遷移をもつエルビウム原子に置換した、エルビウム鉄ガーネット(ErIG)を用いることにより、離調の大きさを3桁程度小さくできると考えている。このErIGには磁化がゼロになる補償温度が存在し、さらにスピン再配列が起こるなど磁気的に大変興味深い特性があることが知られている。平成27年度の後半ではErIGの単結晶の作製を行い、平成28年度に低温環境下でのファラデー回転やFMRの測定が可能となるよう、装置の設計と構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
YIGを用いて光―マイクロ波間での双方向信号変換を実現し、本研究課題である強磁性スピン集団を用いた波長変換器の原理実証ができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
低温下でのErIGの物性を、磁化率、FMR、ファラデー回転、中性子非弾性散乱などの測定を通して理解することを目指す。強磁性スピン集団を用いた量子レベルでの波長変換の実現に向け、希釈冷凍機内部での実験準備も進める予定である。
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Research Products
(4 results)