2016 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性スピン集団を用いた量子インターフェイスの開発
Project/Area Number |
15J09502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久富 隆佑 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 量子エレクトロニクス / スピントロニクス / 磁気光学効果 / 強磁性共鳴 / マグノン / 量子インターフェイス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は強磁性体中のマグノンを媒介として、光とマイクロ波での間のコヒーレントな情報伝達を実現することを目指し研究を行っている。平成27年度に双方向変換が可能であることを実験的にそして定量的に示し、平成28年5月、Physical Review B誌上で論文を発表した。その2ヶ月後の7月にはNature Photonics誌にResearch highlightsとして取り上げられた。この研究は、全てのスピンが一様に歳差運動しているモード(Kittelモード)を用いて行った。この強磁性スピン集団を媒介とする手法によって量子極限での信号変換(例えば単一光子の変換)を実現するには、変換効率の改善が必要不可欠となる。変換効率は様々な要素によって決定されるが、我々の系は光とマグノンの間の結合強度がボトルネックであることが明らかとなっており、平成28年度、特に私は光とマグノンの結合強度を如何にしたら増強できるかということを念頭に次の2つの指針をもって実験を行った。
(1)物質の変更 これまで用いてきたイットリウム鉄ガーネット(YIG)をエルビウム鉄ガーネット(ErIG)に変更し、ErIGのファラデー回転量がYIGに比べ大きいことを実証した。 (2)マグノンモードの変更 光とマグノン間の結合強度は、それぞれのモード体積のオーバーラップがとれている方が強くなり、さらに両方のモード体積が小さい方が強くなるという特性を持っている。これまで用いてきたKittelモードはミリメーターサイズの試料全体にモード体積をもつモードである。そこで光、マグノンともに試料表面に局在するようなモードを使うことによって結合強度を増強できると考え実験を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)物質の変更について ErIGは磁化がゼロになる補償温度(80 K付近)が存在するなど、磁気的に大変興味深い特性をもっていることで知られているが、低温(10 K以下)での観測報告が少ない。平成27年度中にその試料を実際に作成したことは既に報告したが、平成28年度はそれを用いて実際に低温環境下でのファラデー回転を測定し、YIGを用いた時に比べ回転量が増大していることを実証した。一方、マイクロ波を用いたErIG中のマグノンの観測については未達成であるが、平成29年度中に中性子非弾性散乱を用いた測定によって明らかにしたいと考えている。
(2)マグノンのモードの変更について 平成28年度後半に測定系の立ち上げを行い、既にマイクロ波を用いた表面モード観測には成功している。平成29年度前半で光を用いた測定が可能となるよう、測定系の準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)物質の変更について マイクロ波を用いたErIG中のFMR観測については未達成であるが、平成29年度中に中性子非弾性散乱を用いた測定によって明らかにしたいと考えている。
(2)マグノンのモードの変更について 平成29年度中に、表面に局在したマグノンと光との結合を観測し、さらに共振器構造を取り入れた系の構築を行う予定である。
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Research Products
(3 results)