2016 Fiscal Year Annual Research Report
近世東アジアにおける伊勢神宮認識に関する思想史的研究
| Project/Area Number |
15J09552
|
|---|
| Research Institution | Ritsumeikan University |
|---|
Principal Investigator |
肖 月 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
| Keywords | 龍煕近 / 近世伊勢神道 / 神代巻 / 度会延佳 / 伊勢神宮 / 近世化 / 中世日本紀 / 神仏習合 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
2016年の研究活動は前期と後期に分けている。前期の研究テーマを「龍煕近と彼の神道思想－『神代評注』と『神国三徳評』を手がかりとして－」にして、龍煕近という人の史料収集を4月から行っていた。2015年度から使っている度会延佳の史料も活用し、文学研究と神話研究においてのみ利用されてきた『日本書紀』の神代巻を巡って、煕近と延佳の神話解釈の仕方、また神話に対する認識を研究した。しかし、両者の神話研究に拘らず、最近注目されつつある「中世日本紀」の研究、延佳と煕近と同時代の人々の神代巻研究にも目を配り、近世前期の伊勢神道を営む神宮知識人の神話解釈、神道論の特徴と意義についての解明を試みた。近世前期まで神代巻の研究史をきちんと整理し、煕近まで、神代巻はどのように解釈され、何か問題として注目され、中世の伊勢神道論、とくに「神道五部書」として仰がれた書物は神代巻のいかなる内容を吸収したのかなどの問題を明らかにした。成果の一部は「伊勢神道の近世化再考－龍煕近と度会延佳の所論を通じて－」というタイトルで2017年4月刊行した『日本思想史研究会会報』（33）に載せた。
後期の研究は指導教官の意見によって修正と補足の作業を主な研究内容とした。また、つい最近新たに入手した度会延佳・龍煕近の後の伊勢神道家と称される伊勢神宮神主の史料を解読し続けている。なお龍煕近の『神道要訣」という史料の翻刻・解読作業を行い、前期の研究成果を参照しながら、彼の神道思想の変化を分析した。
今年度の研究の成果の一部を2017年2月の京都・ソウル・台北東アジア次世代国際学術大会にて中国語で報告した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、前年度の計画通り、視野を度会延佳一人から龍煕近に伸ばし、できるかぎり彼の著作を収集・分析した。彼の研究をする中で、煕近をめぐる外宮祠官の人間関係を洗い出し、煕近延佳と同時代の人で儒家思想を大量に自分の著作に刷り込ませる上記の両者とまったく違う姿勢で伊勢神道論を営む与村弘正という人を見つけた。そこで、近世前期の伊勢神道を度会延佳一人の神道論の検討だけが不十分であるという問題の解決方法として、延佳・煕近両者の比較検討からもう一人与村弘正を加え、より立体的な近世前期伊勢神道の研究を可能にした。
|
| Strategy for Future Research Activity |
2017年度の研究計画も2016年度と同じく前期と後期に分けて実施する。
前期の研究活動はすでに2017年2月から始まり、度会延佳・龍煕近・与村弘正三者の神道思想の解明を「神」「道」の解釈に絞って分析する。今このあたりの分析はすべて終え、これから中世において「神」「道」はどのような解釈が施され（神道五部書・『類聚神祇本源』・『唯一名法要集』という三つのテキストの分析より）、また三者と同時代の知識人、例えば山崎闇斎・山鹿素行・熊沢蕃山の「神」「道」の理解はどのなものかを明らかにして、近世前期伊勢神道の神道論の特徴と歴史的位置づけを究明する。同時に2016年から分析し続いている三者の「中臣祓」「神代巻」の解釈も上記の研究と同様な方法で研究し、神典解釈においての伊勢神道の特徴・位置づけを検討する。
後期は「度会延佳以降の伊勢神道―黒瀬益弘・喜早清在の神道論・古典研究と旬一講会―」というテーマを設け、延佳・煕近・弘正以降の伊勢神道論の展開を研究する。十七世紀中後期以降の伊勢神道の研究は個別の人物研究以外ほとんど空白状態であり、近世伊勢神道の第二世代の神道論外宮の学術雰囲気はまったく未解明である。この研究を通じて、第一代の伊勢神道論はどのように受け止められ、どのように展開したのかを明らかにする。
|
Research Products
(6 results)
