2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代日韓民衆宗教の提携と「帝国」の民衆 -大本教と普天教の事例を通じて
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15J09575
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
朴 海仙 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 民衆宗教 / 普天教 / 大本教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究課題である大本教と朝鮮普天教の提携、すなわち近代日韓民衆宗教間の交流・提携という問題を明らかにする上で、必然的に先決されるべき課題である植民地朝鮮の宗教状況を考察することに主眼を据えて研究を行った。というのも、本課題は両教団の交流と提携にかんする具体的実態の様相を把握することはもちろん、「植民地支配/被支配」といった時代状況と不可分の関係性を保っている「宗教」の問題を問い直し、そこから見えてくる近代日韓関係の新たな一面を模索するを目的としているからである。 以上の成果は次のようにまとめることが出来る。 まず上半期には、植民地朝鮮の宗教地形が、公認宗教と非公認宗教(秘密結社)、そして両者の間に不明瞭に設けられた「類似宗教」という地層からなっていたこと、そして宗教地形が形成されつつそこで醸し出された複数の緊張関係が、内に属していた朝鮮の民衆宗教教団に齎した影響などを考察した。加えて下半期には、朝鮮の民衆宗教教団に多大な思想的遺産を残している朝鮮後期の予言書『鄭鑑録』に注目し、『鄭鑑録』の真人出現説が時代状況と相俟って多様に変容されて流布し、それが民衆宗教の成長要因として働いていたことなどを指摘した。 以上をまとめた成果は、前者は日本宗教学会第74回学術大会、日韓次世代学術フォーラム第12回国際学術大会、後者は東アジア宗教研究フォーラムで学会報告することが出きた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、近代日韓関係における植民地支配と被支配という経験のなかで、必然的に派生する相互の意識変容を、大本教と朝鮮の普天教との提携を通じて分析することである。両者はこれまで、その類似性・影響関係が指摘されてはきたものの、未だ「帝国」という視点から本格的に両者を取り上げた研究はほとんど無い。しかして本研究では帝国の形成とともに大きく変わっていく社会のなかで、個別の宗教教団がどのように対応しその結果がどのようなことだったのかを追いつつ、宗教領域の再構築や概念の変容過程などをも、視野に入れて作業をおこなった。その結果、内地日本と植民地朝鮮に設けられた宗教地形が最後までその非同質性を保ちながらも、絶えず相互作用していたことなどを勘案すると、こういった力学関係の中で大本教と朝鮮普天教がもつ意義を再規定できたと思われる。 以上の研究課題に即して見れば、本研究は順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、本年度に日本、韓国などで蒐集した史料をより積極的に活用して、主に次の二点を念頭に置いて研究を行っていきたい。 第一は、日韓併合以前からはじまった、在朝日本人たちによる朝鮮研究のなかで、とくに民間信仰や宗教にかんする成果をより綿密に分析していきたい。つまり、彼らの朝鮮在来の宗教への視線や認識、関連言説を、植民地統治の大々的な転換が行われた1920年代のそれと比較し、いわゆる「類似宗教」概念が形成していく過程を追跡して、その変化を内地日本での宗教行政とも連動して考察していく。 第二は、大本教や朝鮮普天教、天理教・金光以外の、いままで学界で注目されたことが少ない青林教などが行った他宗教との交流・提携の様相も分析する。 そして以上を含め、博士論文の執筆を終え、提出することを最終的な目標としている。
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Research Products
(3 results)