2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J09653
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
纓田 宗紀 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 教皇庁 / 教皇特使 / 枢機卿 / ファミリアーレース / シトー会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度行った作業は以下の3つである。 1)シトー会士でもあるグイドが教皇特使として出席した1265年のシトー会の総会について検討した。従来のシトー会研究では教皇特使の存在にあまり注意が払われていなかったが、教皇がグイドに与えた指示に着目し、この年の総会で議論された問題が、グイドの主導によって解決に導かれたことを明らかにした。 2)聖地援助金(十字軍税)回収に関する調査。1260年代に枢機卿グイドが派遣されたことで教皇庁との関係を密にしたデンマークでは、第二リヨン公会議(1274年)で聖地援助金の徴収が決議された後、現地人ではなく教皇の息のかかったフランス人聖職者が徴収人として派遣された。この徴収人と教皇の書簡のやりとりと決算報告を検証した結果、a)現地の聖職者が徴収を担った他の多くの地域では、徴収人が継続して機能を果たせなかったが、デンマークにおいてはひとりの徴収人が長期間機能したこと、b)この聖地援助金回収事業の過程で金融業者がイタリアからデンマークに派遣され、デンマークが、イタリアの金融業者を介した金銭輸送システムに組み入れられたことが明らかになった。 3)教皇特使ジョバンニ・ボッカマッツァを対象とする調査。ジョバンニ・ボッカマッツァは、グイドの次に教皇特使としてアルプス以北へ派遣された枢機卿である。8月にはドイツの文書館を訪問して未刊行史料を収集した。ボッカマッツァが発給した文書と派遣先の地域の文書集に所収されている文書からは、受け入れ側の教会が支払うことが慣例となっていた教皇特使の活動資金をめぐる教皇特使と地方教会の攻防を垣間みることができた。地方教会にとって、教皇特使の来訪は、教皇権にアクセスするための手段である一方で、その受け入れがおおきな負担とみなされていたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、ジョバンニ・ボッカマッツァを対象とする調査に着手できた。まだ史料の収集と分析は完了していないが、これまでの調査からは、教皇特使として活動する枢機卿にとって派遣先の司教区から回収する活動資金が、自身が抱える家人集団(ファミリアーレース)を経済的に支える財源となっていたという、教皇特使の制度を理解するうえで重要な事実が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
教皇特使のファミリアーレースに関する研究を継続し、2017年5月21日に行われる日本西洋史学会(一橋大学)においてその成果を報告する。その後、1303年から1304年にかけてオーストリアに派遣され、ハンガリーの王朝交代に対応した教皇特使ニコラウス・ボッカシーニを対象とする研究に着手する。夏季休暇にはウィーン国立文書館で史料調査を行う。
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Research Products
(2 results)