2015 Fiscal Year Annual Research Report
アスリートへの還元を目指した、糖質摂取による疲労抑制効果の統合的解明
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15J09717
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小西 可奈 立命館大学, スポーツ健康科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 栄養 / 糖質 / 認知機能 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,末梢性疲労,中枢性疲労,制御機能,さらには認知機能と,スポーツで想定される多くの疲労を予防する現場応用可能な糖質摂取方法を明らかにすることである.その目的達成のために,本年度は実験1-1として「長時間高強度運動が認知機能を低下させるプロトコルの確立」を行った.また実験1-2として「運動時の糖質飲料によるマウスリンスが認知機能に与える効果」を現在検証している.これまで,運動時の糖質摂取が末梢性疲労,中枢性疲労および制御機能低下抑制効果を有することは明らかにされている.さらに認知機能に対する糖質の効果を明らかにすることにより,運動時に生じることが想定される疲労の各要因を統合的に抑制する糖質摂取方法を得ることができる.今年度は下記二つの実験を行った. 実験1-1は長時間の高強度運動により認知機能を低下させるプロトコル(認知機能の評価方法)を確立することを目的とした.若年男女8名を対象として,65分間の座位安静あるいは75%最大酸素摂取量運動強度での走運動を実施した.安静及び運動の前後に認知機能(ストループ課題)を評価した.ストループ課題は正答率を80%以上担保するよう被験者に指示をし,反応時間を主指標として評価した.その結果.運動前に比べ運動後に認知課題の反応時間が延長した(認知機能の低下).認知課題の成績に影響する「精確性と速さのトレードオフ関係」を考慮し,認知機能の変化を感度高く同定できる課題を適用することにより,高強度長時間運動による認知機能の変化を検出することが可能であることが明らかになった. 実験1-2の目的は長時間の高強度運動において,糖質飲料によるマウスリンスが認知機能の低下抑制効果を有するか否かを検証することとした.現在データの取得及び解析中である.方法の詳細は今後の研究の推進方策に記載する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は運動が認知機能を低下させるプロトコルの確立を目指し予備実験を重ねて実施した.その成果として,最大酸素摂取量75%強度の走運動を65分間行い,その前後で認知機能(ストループ課題)を評価するプロトコルの確立に成功した.若年男女8名を対象として実験1-1を行い,安静条件の前後で認知機能の変化は見られないが,長時間の高強度運動によって認知機能が低下することを明らかにした.現在は実験1-2「運動中の糖質飲料によるマウスリンスが認知機能に与える効果」の検証を順調に進めている.平成27年度の研究進捗状況は予め計画した予定の通り順調に遂行できている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には実験1-1および実験1-2の結果を学術論文として二編投稿する予定である.さらに,実験1-2のデータの取得及び解析を進める.対象者は成人男女10名とし,糖質飲料条件および水条件(対照条件)をクロスオーバーで実施する.糖質飲料は先行研究で用いられている種類および濃度(マルトデキストリン60g/1L)とする.マウスリンスは運動中10分経過毎に行った.運動は実験1-1で確立したプロトコルを参考に65分間のトレッドミル走運動とし,認知機能は実験1-1と同様にストループ課題の反応時間によって評価する.血中グルコース濃度,血中乳酸濃度,血中インスリン濃度を測定する.また,血中コルチゾル濃度,アドレナリン濃度,ノルアドレナリン濃度,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)濃度を測定し認知機能との関連を検討する.予想される結果は,水マウスリンス条件では運動により認知機能が低下する.一方,糖質マウスリンス条件では運動後の認知機能の低下が抑制される.平成28年5月には全データの解析を終了する予定である.その後学術論文として国際誌に投稿する予定である. さらに,実験2である「競技に特化した疲労を軽減する最適な糖質摂取方法の検討」を実施する.実験1-2により得られた糖質介入方法に基づき,競技の試合時間 に即した糖質介入方法を検討する.対象は男性の競技スポーツ選手とし,競技は野球とする.競技の試合時間や運動様式を模擬したプロトコルにて,競技パフォーマンスを反映する評価指標(認知課題および体力)を測定し,糖質摂取が運動に伴う各機能の低下を抑制することが出来るか否かを検討する
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Research Products
(1 results)