2016 Fiscal Year Annual Research Report
リグノセルロースファイバー構造から考察する細胞壁中リグニンのモルフォロジー
Project/Area Number |
15J09745
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安藤 大将 京都大学, 生存圏研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 化学標識 / EDXA-SEM / モルフォロジー / リグニン / リグノセルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成28年度)はEDXA-SEM分析による元素マッピングのためのリグノセルロースへの官能基導入に関する知見を元に、実際に試料の元素マッピングを試みた。昨年度の結果を元に、まず、試料中の一級水酸基に嵩高い官能基であるトシル基を導入し、試料包埋用樹脂に溶媒置換、包埋したのち、顕微鏡観察用試料切片を調製した。このとき、予想通り、官能基の導入により元の試料よりも樹脂含浸しやすいことを確認した。しかし、元素マッピングの際、トシル基由来の硫黄元素の検出強度が弱くマッピングが難しいことが明らかになった。これは不均一反応による反応性の低下による官能基の導入率の低下などが一つの要因としてあげられる。そこで、これまでの酸クロライドでは、十分でなかった木材のマトリックス成分(ヘミセルロース、およびリグニン)への反応を改善すべく、再度アセチル化によるモデル実験により条件を検討した。その結果、無水酢酸系とビニル酢酸の系においてマトリックス成分をほぼ完全にアセチル化することに成功した。試薬の反応性においては酸クロライドの方が酸無水物よりも反応性が高いにもかかわらず、非常に興味深い結果となった。このとき、得られたアセチル化試料は熱圧成形の可能性を示していたことから、今後、観察試料の包埋用樹脂の含浸などを省略できる可能性が示された。この結果をもとに、酸無水物やビニル化合物などを官能基導入試薬として今後検討していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学標識を導入し、EDXA-SEM観察を行なった。その結果、トシル基由来の硫黄元素の検出強度が弱くマッピングが難しいことが明らかになったものの、木材のマトリックス成分に高選択的に、高効率で官能基を導入する反応条件を検討でき、官能基導入量を上げることができる可能性が示唆された。また、より重元素を含む異なる官能基の選択もできるため、29年度において、これらの方法を試み、マッピングを行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
28年度は官能基導入量をあげることができたため、再びEDXA-SEM観察により元素マッピングを予定通り行う予定である。 一方で、検出強度が弱くなる可能性があるため、より適した重元素の検討を試みる。また、木材のマトリックス成分の高選択的な反応を用いることで熱圧成型する新たな観察試料作成についても検討する。
|
Research Products
(5 results)