2015 Fiscal Year Annual Research Report
単一細胞アポトーシス誘導システムを用いた周辺細胞への増殖シグナル伝播の可視化解析
Project/Area Number |
15J09783
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀井 咲耶 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | アポトーシス / がん微小環境 / 細胞間コミュニケーション / セミインタクト細胞リシール法 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではアポトーシス細胞のATP放出により、周囲の癌細胞で増殖シグナルが誘導されるか検証を行うため、青色光依存的に二量体を形成するCRY2-mCherry-Bax/CIBN-Tom5等の光誘導型アポトーシスシステムを構築することで、単一細胞にアポトーシスを誘導し、その周辺生細胞の応答を定量的に可視化解析することを目指す。 作製したCRY2-mCherry-Bax/CIBN-Tom5システムでは、光照射以前にBaxの過剰発現による細胞死が確認されたため、ミトコンドリアへの移行を制御するアミノ酸に関する変異体を用い、Baxの移行により起こるcytochrome cのミトコンドリアからの漏出を蛍光抗体法により評価した。野生型発現条件ではcytochrome cの漏出が20%の細胞で見られ、二量体形成誘導後は33%と制御性が低いのに対し、変異体発現条件では漏出の起きた細胞の比率が8%、二量体形成誘導後では80%となった。変異体利用により二量体形成誘導後10倍までアポトーシスを増加させることに成功した。 また今後、 セミインタクト細胞リシール法により再構築したがん細胞の細胞質環境に依存したシグナル応答の差異の解析を行いたいことから、細胞質交換と同時に光誘導型アポトーシスリコンビナントタンパク質を導入し、アポトーシスを誘導することを目指す。変異型CRY2-mCherry-Baxタンパク質は、その分子量から導入効率の低下が予測されたため、光誘導型アポトーシスタンパク質の小型化の検討を行い、候補の一つである小型化光誘導型アポトーシスタンパク質をリシールした細胞において生細胞が光依存的に有意に減少する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において、研究の要となる光誘導型アポトーシスシステムの構築を達成した。このCRY2-mCherry-Bax/CIBN-Tom5は、トランスフェクション等による動物細胞の発現系でのアポトーシス癌細胞の周辺環境の解析に使用可能であると判断した。また光誘導型アポトーシスシステムの小型化にも取り組み、セミインタクト細胞リシール法により導入可能なリコンビナントタンパク質を作成し、現在詳細な解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずアポトーシス細胞からの位置情報を含んだ周辺生細胞の蛍光抗体染色画像の定量化システムの構築を目指す。アポトーシス細胞に対する生細胞のシグナル応答の空間的差異に依存した変化は、細胞集団全体を解析する生化学的手法では解析が困難であり、このシステムによって詳細な解析が可能であると考えている。定量化システムの構築後、誘導型アポトーシスシステムとセミインタクト細胞リシール法とを組み合わせることで、細胞質環境に依存したアポトーシス細胞周囲のシグナル応答の定量解析を進めていく。
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