2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J09835
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平石 秀史 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | マトロイド表現論 / グラフ・マトロイドマイナー理論 / イジング模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、主に二方向の研究を行った。 第一の方向性は、様々なマトロイド構造の特徴づけに関する研究である。マトロイドは、計算機科学や離散数学の種々の問題において、その疎構造として広範に登場する離散構造である。マトロイドは、グラフの持つ組合せ構造のある側面に関する一般化として知られる一方で、グラフの場合と異なり、各部分構造に簡潔な特徴づけが存在するかについては不明な部分が多い。本研究では、特にベクトル空間・射影空間との対応が存在するような体上表現可能マトロイドと呼ばれる部分構造や、順序体上のベクトル空間の構造を詳細に表現・記述できる向き付け可能マトロイドと呼ばれる部分構造に関して、マトロイドマイナー理論の観点から、特徴づけの困難性を解明する研究を行った。特に、最も基礎的な低次元(低階数)の場合にさえ、それらの特徴づけが困難であることを示した。 第二に、統計物理に由来を持ち、古典・量子計算においても様々な組合せ最適化問題の計算の表現が可能であることが知られているイジング模型において、分配関数計算に関するアルゴリズム開発を行った。特に問題が持つグラフマトロイド的構造に着目することで、グラフ・マトロイドマイナー理論におけるアルゴリズム設計手法である、枝分解および階数分解を用い高速なアルゴリズムを設計した。枝分解を用いた手法では、行列積演算とあわせることでで計算量理論的に現状で最速のアルゴリズムを構成した。また階数分解を用いる手法では、既存の量子計算における分配関数計算のアイデアを参考にすることを通じて、将来的に量子計算へ拡張することを見据えたアルゴリズムを設計した。 また、これらの研究成果に関して、前者の研究成果に関しては論文誌および国際学会において発表を行い、後者の研究成果に関しては国際学会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り、マトロイド表現可能性に関する研究をマトロイドマイナー理論の視点から進め、その特徴づけの困難さに関して詳細な解析を行った。また同時に、イジング模型上の計算問題に関して、マトロイドマイナーの手法を用いることで、高速なアルゴリズムの設計を行った。また、それらの研究成果を論文誌や複数の国際会議で発表しているという点においても、本研究課題の進捗についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、マトロイド表現論に関する理論研究、およびマトロイド表現論・マトロイドマイナー理論を駆使した他分野への展開という二つの方向性から成り立っている。 前者のマトロイド表現論に関する理論研究に関しては、今年度の研究成果を元に、体上表現可能性および向き付け可能性の特徴づけに関してさらに精査をし、より詳細な解析を行うことを想定している。 後者の他分野の展開としては、本年度開発したイジング模型上の分配関数計算アルゴリズムの高速化・一般化を、マトロイドマイナー理論を用いることで試みると同時に、ネットワーク理論をはじめとした他分野への展開を目指す。
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Research Products
(6 results)