2016 Fiscal Year Annual Research Report
多欠損型ポリオキソメタレートを基盤とした多核金属活性点の構築と触媒特性の制御
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15J09840
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湊 拓生 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 異種金属多核構造 / 磁気特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子レベルで設計した多欠損型ポリオキソメタレート(POM)の欠損部位へ金属イオンを導入することにより金属多核構造を構築し、特異な触媒特性や磁気特性を有する分子を設計・合成することを目的としている。 異種金属多核構造の磁気特性と構造の関係性を解明することは、分子磁性体の合理的な設計をするうえで必要不可欠である。しかし、異種金属多核構造の系統的な合成は困難であるため、簡便で効率的な合成手法の開発が強く望まれている。有機溶媒に可溶な三欠損型POM TBA4H6[A-SiW9O34]への逐次的な金属導入により、異種金属五核構造{CrMn4}を有するPOMの選択的な合成に成功した。反磁性金属を{CrMn4}に導入することにより、{CrMn4}多核構造を保持しながら金属間距離や角度が異なる構造{CrMn4}Ag2、{CrMn4}Lu2、{CrMn4}Lu2Ag2をそれぞれ合成することに成功した。直流磁化率の温度依存性の解析により、全ての構造においてCr-Mn間の反強磁性的な相互作用が示唆された。金属間の角度に対して対応する金属間の交換相互作用をプロットしたところ、Cr-O-Mnの結合角とCr-Mn間の交換相互作用に比例関係が存在することが明らかとなった。従って、本手法は異種金属多核構造の磁気特性と構造の関係性を解明するために非常に有用であることが示唆された。また、本手法を用いて合成された{CrMn4}Lu2Ag2はオキソ架橋された異種金属多核構造の中で最も多くの種類の金属を含む構造であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、多核金属構造を構築するために配位子となる有機溶媒に可溶な多欠損型ポリオキソメタレート (POM)への金属導入と構造決定を目標としていた。前年度までに合成した有機溶媒に可溶な三欠損型及び六欠損型POMへの金属導入に成功し、構造決定や磁気特性評価を行った。三欠損型POMに常磁性異種金属多核構造を構築したのち反磁性金属を導入することにより、原子間結合角の制御が可能となりCr3+-O-Mn3+の系で初めて構造と磁気特性の相関を見出した。本手法は今まで困難であった構造的に同一な異種金属多核構造の系統的な合成法として有用であることが分かった。以上のように、有機溶媒に可溶な多欠損型POMへの金属導入と構造決定にとどまらず、構造と磁気特性の相関を調査するために常磁性多核ユニットの配位構造を制御する新規手法を確立できたため、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本手法で合成可能だった異種金属多核構造において他の金属における適用性を調査する。特に、単分子磁石特性を有する{FeMn4}多核構造に反磁性金属を導入することによって、配位環境を制御し磁気特性を向上できると期待される。また、ヘテロ原子が異なる三欠損型POMと他の金属イオンとの反応も検討する。種々の反応条件を探索することにより、生成する構造や金属種の適用範囲など未解明な部分を明らかにする。さらに、合成した金属多核構造の磁気特性や触媒特性を評価するとともに、特異な磁気特性、触媒特性を有する構造の設計と合成を目指す。
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Research Products
(5 results)