2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J09892
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋川 祥史 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | フラーレン / 内包フラーレン / ヘテロフラーレン / アザフラーレン / 緩和時間 / 静電ポテンシャル / 水分子 / 水素分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘテロフラーレンはフラーレンC60の炭素原子のうちいくつかを対応する個数の炭素原子で置き換えた構造をもっている.これまでに合成が達成されたヘテロフラーレンはアザフラーレンC59Nのみであり,その骨格外部の性質について精力的に研究がなされてきた.しかし,C60骨格への窒素原子が与えるアザフラーレン内部の性質については報告例がない.私は,アザフラーレン骨格内部に小分子を導入し,小分子の動的挙動を検出することでアザフラーレン内部の性質を解明できるのではないかと考えた.そこで,内包小分子として,非極性分子である水素分子および極性分子である水分子を小分子として選定し,アザフラーレン骨格内部に小分子を導入する手法を確立した.また,NMR(ケミカルシフト値・温度可変測定・緩和時間測定)を用いて内包された小分子の動的挙動を調べることで,水分子内包アザフラーレンにおいて,分子内で静電的なN-O相互作用が存在することを明らかにした.さらに,アザフラーレンカチオン中間体を経る反応において,内包された小分子とアザフラーレンケージとの静電的な相互作用に基づき,内包される小分子に応じて異なる反応性を示すことを見い出した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年間の研究において,学術的に興味深い3点の研究成果が得られた.(1)アザフラーレン内部の性質を解明するための手法として,「小分子内包アザフラーレン」をモデル化合物に用いる手法を提案し,実際に異なる手法を用いて水素および水分子を内包したアザフラーレンの合成法を確立した.(2)合成した小分子内包アザフラーレンについて,内包小分子の動的挙動をNMRを用いて評価した結果,予測に反し,水分子とアザフラーレン骨格との間にはアトラクティブな静電相互作用が存在することを見いだした.(3)さらに,この相互作用を明確に観測するためにカチオン中間体を経由する反応について速度論解析を行なった結果,水分子によるカチオン中間体の安定化およびその生成速度の向上を示唆する結果を得た.
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究において,アザフラーレン骨格上の窒素原子の内側はより強く正に帯電しており,内包された水分子の回転運動を抑制する静電的なエネルギートラップとして働くことが明らかとなった.このことから,フラーレン骨格外部を化学修飾することにより,フラーレン内部の静電ポテンシャルも同時に変化すると考えられる.そこで,C60骨格上にC(C60)-X (X: heteroatom)結合を導入すれば,その分極の程度を内包された水分子の動的挙動という観点から評価できると考えられる.このように結合分極を定量的に評価する新しい手法を確立するとともに,アザフラーレン以外のヘテロフラーレンの創製を目指し,開口フラーレンを合成し,ヘテロ原子を開口部に導入する反応の開発に取り組む.
|
Research Products
(12 results)