2016 Fiscal Year Annual Research Report
契約概念によるサービス構成論に基づくセンサ指向ソフトウェア設計開発環境の研究開発
Project/Area Number |
15J09912
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
生出 拓馬 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | センサプラットフォーム / 参加型センシング / エージェント / 協調プロトコル / マッチングメカニズム / D2D通信 / スマートフォン / IoT |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度の設計に基づき,(1)契約概念に基づくサービスモデルの精緻化,(2)サービス構築プラットフォームのプロトタイプ実装,(3)プロトタイプ上で動作する応用例の試作を推進した。 (1)契約概念に基づくサービスモデルの精緻化においては,昨年度に実施した設計を発展的に拡張し,様々な利用者環境における動的なコンテキストの変化に対応可能なマッチングメカニズムを構築した。その後,シミュレーション実験によって性能を評価し,昨年度のプロトコルと比較し同程度のマッチング成功率を保ちつつ,契約の破棄率の減少とタスクの完遂率の上昇を実現した。 (2)プラットフォームのプロトタイプ実装においては,オーバーレイ層とネットワーク層について検討を推進した。ネットワーク層については,一般的なスマートフォン端末のみを用いてD2Dネットワークを構築するためのプロトコルの設計を実施した。また,オーバーレイ層については,端末間で構築する仮想的なオーバーレイネットワークの制御手法として,SDNのアプローチを用いた集中型制御方式と,P2Pネットワークのアプローチを用いた分散型制御方式について検討した。 (3)プロトタイプ上で動作する応用例の試作においては,センサデータの共有アプリケーションの試作と評価を実施した。試作アプリケーションでは,利用者は地理的な空間と取得したいセンサデータの種類および期間を指定することで,目的のデータをリアルタイムで取得し閲覧することができる。この時,プラットフォーム内において利用者間でマッチングプロトコルと契約締結プロトコルが自律的に実行され,締結した契約内容に応じて動的にデータの流通経路が構築される。そのため,利用者は特別な知識や操作を必要とせずに必要なデータのみを利用できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「契約概念に基づくサービスモデルの精緻化」の研究項目において,本年度は,契約履行状況の監視プロセスや契約破棄時のペナルティ付与について検討・設計を実施する予定であった。これに対して,部分契約の概念を新たにモデルに導入することで,監視プロセスや契約破棄時の考慮だけではなく,契約破棄が起こりうる可能性をあらかじめ考慮した上で契約を締結することで,センサデータ流通の安定性を向上させることができた。また,本研究成果を報告した国内研究会において,奨励賞と優秀プレゼンテーション賞を受賞した。 次に,「サービス構築プラットフォームのプロトタイプ実装」の研究項目において,本年度は,目的のユーザの発見と到達可能性を保証するモバイル端末を対象としたオーバーレイネットワーク基盤の設計・実装を実施する予定であった。これに対して,機能要件を満たすネットワーク基盤を実装し,プラットフォームのプロトタイプを実現した。モバイル端末への対応については論理レイヤと物理レイヤの双方向から検討が進められており,次年度に検討結果を反映する予定である。なお,本研究成果は国際論文誌であるIEEE Access (IF: 1.270)に採択された。 また,「プロトタイプ上で動作する応用例の試作」の研究項目において,本年度は,実環境において柔軟なセンサデータの共有が実現できることを確認する予定であった。これに対して,計画通りの機能を実現するアプリケーションの試作を実施しただけではなく,データの提供に際する利用者のプライバシ感覚に応じて適切に流通データの開示程度を決定する手法の検討を発展的に実施することができた。 以上により,本年度は当初の計画通りに進捗しており「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本年度までに行ったプロトコルの精緻化とプロトタイプ実装に基づき,(1)モバイル端末を対象としたオーバーレイネットワーク基盤の実装,(2)応用例の開発によるプラットフォームの総合評価を遂行する。 (1)モバイル端末を対象としたオーバーレイネットワーク基盤の実装:本年度に実施した検討に基づき,ノードの移動性を考慮した効率的なネットワーク基盤を実現する。具体的には,ノード間の物理トポロジと移動性を考慮して論理トポロジを構築することで,メンテナンスパケットを抑制しながらノードの検索機能の安定性を向上させる。 (2)応用例の開発によるプラットフォームの総合評価:複数のユースケースを想定した応用例を開発し,設計フィードバックとプラットフォームの総合評価を実施する。具体的には,利用者要求やネットワーク環境の変化,そして他サービスの挙動に応じて柔軟に品質や機能の制御を実現し,提案基盤上で柔軟なセンサデータの共有が可能であるかを検証することで本研究の有効性と適用可能性について評価する。
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Research Products
(9 results)