2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J09975
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西村 勇姿 大阪府立大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 光発熱効果 / 金属ナノ粒子 / 光アセンブリング / バブル / ナノバイオ / 流体工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
光誘起の流体効果で生体関連物質の相転移,特異的結合,細胞の状態制御の原理を開拓し,社会で求められるバイオ分析技術に発展させることが本研究の目的である.初年度は「金属ナノ粒子固定化ビーズ(金属ナノ粒子を高密度にプラスチックビーズ表面に集積化した構造体)」が分散したサンプル液中に赤外レーザーを照射して生成される「光誘起バブル」の発生機構・安定化機構の解明に挑んだ.この光誘起バブルは光発熱効果による局所的な沸騰現象によって生じているが,実験結果からバブルのサイズはレーザー照射時間の平方根に比例することが分かり,この関係を熱力学的理論によって説明することに成功した.さらに,金属ナノ粒子固定化ビーズの個数濃度を変化させて発生させた光誘起バブルのレーザー停止後の経時変化を調べたところ,バブル表面で金属ナノ粒子固定化ビーズが密に配列することでバブルが安定化した可能性が示唆され,そのプロセスを光学顕微鏡下で可視可することにより,この系でバブルが安定化するメカニズムを解明した[2016/3 応物学会で発表]. また,我々はこの光発熱効果を利用した熱変性タンパク質の高感度検出を提案していたが,その課題であった定量化を克服するためにマイクロ流路を用いた実験を行った.マイクロ流路の使用は立ち上げ段階のため,初年度は流路内での光誘起バブル発生の条件探索を行った.その結果,四方を壁で囲まれた狭小空間において静止流体中,またシリンジポンプでサンプル液を流した動的流体中の両方において効率的に光誘起バブルを発生させる条件を見出した[2016/5 分析化学討論会で発表予定].得られた知見を基にタンパク質検出を行ったところ,多数のバブルが発生することが分かり,これまでより一桁低い濃度で検出できる可能性も解明した.得られた原理はマルチバブルを利用した迅速かつ高感度なタンパク質センサの開発に応用できる可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したように,光誘起の流体効果に注目した新しい集積化方法である光発熱アセンブリングの原理解明に成功しており,流れの効果を巧みに利用した微小物体の状態制御の指導原理開拓を目的とした本課題を十二分に進展させたと言える. また,これらの知見を基にしたDNAハイブリダイゼーションの光加速の原理構築と遺伝子検査法への応用の検討については当初次年度以降の計画として挙げていた.しかし,光照射によってDNAのハイブリダイゼーションが加速されてマクロな集合体を形成することを発見し,ターゲットDNAの塩基配列を変化させて光照射した場合には塩基配列の違いによって異なる集合挙動と光学スペクトルの変化を示すことを明らかにした.これはミスマッチDNA検出に応用できる可能性を示唆するものであり,この成果は現在学術論文誌に投稿中である. さらには最終年度に着手する予定である細胞の光集積と機能制御に関しても,光誘起バブルによる単細胞生物の集積化に成功して細胞の光集積に関する基礎的知見を得ており,米国光学会誌に掲載された.このように順調に進展している計画の中でも一部前倒しにすることができ,目覚ましい成果も得られていることから,当初の計画以上に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
光照射によって引き起こされる流体現象のシミュレーション法を構築することを目指す.その前段階として,マクスウェル方程式を離散化積分形で解いて金属ナノ粒子の集団的な光学応答を自己無撞着に決定し,その成果から予想される発熱量を見積もり,熱対流を数値流体力学の手法を用いてシミュレートする.さらに,液中にマイクロ~サブミリオーダーの粒子が存在するような状況を解析し,光誘起集積化の制御を図る.熱変性タンパク質検出への応用に関しては,マイクロ流体チップ中の狭小空間を用いることで微量のタンパク質が高い確率でレーザースポット近傍を通過する系を構築して定量的検出を目指し,抗体を用いた特異的検出の可能性も探る.また,初年度に得られた新現象であるマルチバブルの発生機構の解明についても検討する. 同時に,次年度に予定していたDNAハイブリダイゼーションの光加速の原理構築と遺伝子検査法への応用についても本格的に着手し,再現性などを向上させるための実験的手法の確立に注力する.さらに,理論計算から光照射下でのナノ粒子の確率的な振る舞いを計算し,プラズモニック超放射との関係性を解明することで理論と実験の対応を図る.
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Research Products
(17 results)