2016 Fiscal Year Annual Research Report
「日本軍政下のジャワ島における現地人ジャーナリストの活動」
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15J10008
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
織田 康孝 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 高嶋辰彦 / スメラ学塾 / スカルノ / ジャワ島 / 日本軍政下 / 「大東亜共栄圏」 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に日本軍政期におけるインドネシアの独立運動に着目して研究を遂行した。 成果としては大きく分けて二点あり、第一点目としては、インドネシア・ジャワ島において設立された旧慣制度調査会に焦点を当て、同会が従来の役割(ジャワ島における慣習などを現地の民族指導者たちに調査させ、日本のジャワ島における施策のヒントにする)を超えて、現地の民族指導者側は同会を巧みに利用し民族主義運動=独立運動の機関として変化させたという点を明らかにしたことである。 続いて二点目は、史料調査の成果である。研究代表者は、2017年1月にインドネシア・ジャカルタに赴き、地方新聞を複写してきた。同史料は、日本で閲覧できる場所はなく、実際現地に行かないと閲覧できないものであり今後の研究発展に大きく寄与するものとなる。さらに、国内においても防衛研究所において「高嶋辰彦日記」・「真田穣一郎日記」を閲覧し高嶋辰彦が軍政初期において宣伝班を牛耳ろうとしていたということが判明した。高嶋辰彦は、当時ジャワ派遣軍の宣伝班長であった町田敬二と同期であり、両者とも極端な日本中心主義的構想の持ち主であった。特に、高嶋は、当時極右団体として存在していたスメラ学塾という団体と非常に深い関わりを持っており、スメラ学塾の講師で思想家の清水宣雄や同塾学生をジャワ宣伝班の一員として随行させ、ジャワ島において宣伝・宣撫活動を行わせていた。実際に清水は現地語新聞Asia Rayaの幹部であり、同紙に寄稿するなど当該期のメディア事業と深く関わっていた人物である。この日本中心主義的構想がジャワ島に与えた影響は大きく、特に民族指導者層からは反発の声などがあがっていたそうで、軍政部としてはこれらに取って代わる政策を模索していかなければならなかったのであった。 なお、以上の研究は、今後より発展させ、成果として学会報告・学術論文化していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、前年度の「今後の研究の推進方策」に記したように軍政当局内での占領地に対する統治構想の差異を明らかにすることを目標としてきた。その目標が達成(上記、「研究実績の概要」を参照)できた。同時に、当該期のインドネシア・ジャワ島で刊行されていた地方新聞もインドネシア現地に赴いて複写し、帰国後分析作業を進めている。さらには、前年度に行った研究を論文化し、それを現在学会に投稿中であるので(1)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度に遂行した研究、特に日本軍政期におけるインドネシアの独立運動(旧慣制度調査会の役割を中心に)を論文化していくとともに、日本軍内部でのジャワ島統治構想の違いを現在以上に浮き彫りにしていきたい。また、これら構想がインドネシアの独立運動にいかに作用していくか、また、地方新聞などを分析していき、それらがいかに報道されていくかなど様ざまな視点から研究を遂行していき、インドネシアにとって日本軍政期がいかなる衝撃であったのかを明らかにしていきたい。
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Research Products
(4 results)