2016 Fiscal Year Annual Research Report
福島第一原発事故による環境放射能汚染とその動態解析に関する研究
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15J10109
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
石田 真展 近畿大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 福島第一原発事故 / 放射性セシウム / 環境放射能汚染 / 土壌 / 堆積物 / リター / 環境動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は東京湾、福島県秋元湖・沼沢湖、群馬県吾妻郡で堆積物、水、生態(植物等)試料を採取した。また、地元のNPO法人の協力を得て宮城県化女沼で魚介類試料を採取した。これらの試料の多くは2011年から継続して採取しており、環境中の放射性セシウムの時空間分布の変動を解析するための基礎データとして使用した。 東京湾では、首都圏東部・千葉県北部の高濃度汚染地帯から流出した放射性セシウムが坂川・江戸川・中川・旧江戸川を通して輸送され、旧江戸川河口域の狭い海域に蓄積していることが明らかになった。若洲海浜公園沖の堆積物では、福島原発事故由来の放射性セシウムは70cmまで埋没しているが、現在の表層堆積物の放射性セシウム濃度は事故初期の700Bq/kgから300Bq/kg程度にまで減衰していた。しかし、現在の蓄積量は100kBq/m2程度であり、増加し続けている。このことは、現在でも東京湾には放射性セシウムが定常的に流入し続けていることを示している。東京湾中央部への放射性セシウムの拡散は現在も認められていない。 沈積環境の異なる秋元湖・沼沢湖の堆積物に記録された放射性セシウム濃度の経年変化を調査した。この湖沼では堆積物中に大気圏内核実験に由来するグローバルホールアウトも検出された。現在、その蓄積機構と堆積環境の関係について解析している。 化女沼の魚介類の放射性セシウム汚染についても継続して調査を実施した。優勢種のオオクチバスについて検討した結果では、Cs-134、137ともに、その生態学的半減期は物理的半減期より短い値を示した。しかし、実験的に推定されている淡水魚の放射性セシウムに対する生物学的半減期に比べると、極めて長い値であった。このことから、化女沼生態系では魚介類を介した食物連鎖に放射性セシウムが取り込まれ、循環していると推定された。生物学的半減期は成魚より稚魚で大きいことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福島第一原発事故に由来する東日本の環境放射能汚染について、研究計画に従った試料採取と放射能測定が実施できた。しかし、大量のデータを取得したために、データの解析が十分に進行していない。本研究では、環境放射能汚染の動態解析を時空間分布に従って実施しているので、解析に時間を要している。事故から6年が経過して、放射能汚染の経時変化の傾向を把握することが容易になってきたので、総括可能なデータから、順次まとめている。 現在、「事故初期における首都圏の放射能汚染の現状とその時系列変動」及び「東京湾の放射性セシウム汚染」については、投稿用の論文原稿を準備し、近日中に投稿する予定である。「秋元湖・沼沢湖の放射性セシウムの蓄積過程の解明」「化女沼における魚介類の放射能汚染とその変遷」「関東平野北部山岳地帯における森林生態系の放射能汚染の動的変化」について、データの整理・解析を実施しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿ったデータ収集は、2016年度まで順調に進行している。従って、2017年度は進捗状況欄に記載した項目に従って、データの整理・解析と論文原稿の執筆、論文の投稿に全力を投入する。
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Research Products
(4 results)