2015 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍性幹細胞を標的とするヒト骨髄増殖性腫瘍制御法の確立
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15J10130
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 拓司 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 新規次世代免疫不全マウス / 骨髄増殖性腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、このBRGSを基盤に、マウス造血が抑制されるマウスc-kit(Wv) を作製したところ、c-kit(Wv) ホモマウスBRGSK(Wv/Wv) では、ヒト骨髄球系細胞の大幅な生着効率の改善を認め、生着した骨髄球系細胞は、成熟好中球・単球・好酸球などへの分化も確認した。現在は、慢性骨髄性疾患である骨髄増殖性腫瘍(Myeloproliferative neoplasms: MPN) や慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia: CML)、骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndrome: MDS) の臨床検体をBRGSKマウスに移植して評価を行っているところである。また、BRGSK(Wv/Wv) マウスにおいては、ヒト赤芽球系・巨赤芽球系細胞の生着率改善も認められているのだが、その生着はマウス骨髄内が主であり、末梢組織である脾臓や末梢血における生着は非常に限定的であった。しかしながら、マウスマクロファージを薬剤クロドロネートにより除去することで、末梢組織における生着率の改善や成熟した赤芽球、赤血球を認めた。In vitroの実験において、NOD型SIRPAは確かにヒトCD47と結合可能であり、それがヒト細胞の生着に寄与しているのだが、ヒト型SIRPAはNOD型SIRPAよりもヒトCD47に強く結合することが示されており、骨髄増殖性腫瘍をマウス内で再構築するには、BRGSK(Wv/Wv)マウスに、さらにヒト型SIRPAの導入が必要となる可能性がある。ヒト型SIRPAノックインマウスは既に作製済みであり、これをBRGSKマウスと交配中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BRGSマウスを基盤に作製したBRGSK(Wv/Wv)マウスは、ヒト骨髄球系・巨赤芽球系細胞の生着率の飛躍的な改善に成功した。ヒト骨髄増殖性腫瘍の再構築はまだ認められていないが、現在も実験検証中である。さらに、SIRPA-CD47結合がより強固となるヒト型SIRPA導入マウスの作製、並びにBRGSK(Wv/Wv)humanSIRPAマウスの作製も行っており、昨年度の研究計画である、ヒト骨髄増殖性腫瘍のマウス内再構築に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
新規次世代免疫不全マウスによりヒト骨髄増殖性腫瘍をマウス内で再構築することが可能となれば、フローサイトメトリー技術などを用いて腫瘍性幹細胞の純化・同定を行う。また、新規次世代免疫不全マウスの開発により、ヒト細胞の生着率は大幅に改善され、今まで困難であった幹細胞ニッチの解析への応用が可能となる。これらの純化した腫瘍性幹細胞・ニッチ構成細胞のプロファイリングを、次世代シーケンサーを用いたディープシーケンスで行うことにより、腫瘍化メカニズムおよびその幹細胞維持機構を明らかにしたいと考えている。 また、現在はHarvard Medical School, Division of Hematology, Brigham and Women’s Hospital に研究留学し、ゲノム改変技術であるClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats: CRISPRを用いて骨髄球系悪性腫瘍の遺伝子発現プロファイリングを行っている。プロファイリングにおいては、次世代シーケンサーを用いてディープシークエンスを行い、膨大なデータから腫瘍におけるessentialなfactorを見い出す技術・知識を修得中である。ここでのプロファイリング技術は、骨髄増殖性腫瘍における純化した腫瘍性幹細胞のプロファイリングへの応用が期待でき、腫瘍幹細胞化メカニズム及びその維持機構を明らかにし、腫瘍幹細胞の治療標的となる分子の同定が可能となっていくと考えている。
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