2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J10161
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柴尾 俊輔 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | グリオーマ幹細胞 / 代謝 / ミトコンドリア / Mitotracker green / オリゴマイシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はグリオーマ幹細胞(Glioma stem cell: GSC)の代謝をターゲットとした治療戦略を構築するために、マウス脳腫瘍モデルを用いてGSCの代謝を明らかにすることを目的としている。まず、ミトコンドリアに着目し、ミトコンドリアの量が少ないGSCが主に解糖経路を利用し、ミトコンドリアを多く含むGSCは主に酸化的リン酸化を利用していると考え、ミトコンドリアの量によって代謝の異なる分画を分取しようと試みた。そのために、HRasV12-dsRED発現マウスGSCを、ミトコンドリアを蛍光標識するMitotracker greenを用いて、その取り込みが高い細胞と低い細胞を前方視的に分取した。そして、前者のATP産生が高く、後者でATP産生が低いことを確認した。しかし、継代を重ねると比較的初期の段階で両者のATP産生能が同等となり、この分取方法では安定した表現型を得るのには不十分であると判断した。そこで、次にミトコンドリアへの阻害による代謝への影響を検討するために、我々がこれまでに確立した代謝の異なる2種類のマウスGSCモデル細胞である解糖系GSC GLY、TCA回路系GSC TCAに、ミトコンドリアの電子伝達系Complex Vを阻害するオリゴマイシンを投与した。興味深いことに、解糖経路を主に利用しているGSC GLYでは代謝の大きな変化はなかったのに対して、酸化的リン酸化を主に利用しているGSC TCAでは酸化的リン酸化から解糖系への代謝変換が認められた。これは、GSCに代謝可塑性があることを示す重要な所見であり、グリオーマ幹細胞の代謝標的治療において発展性が高いと考えられた。そのため、本研究ではグリオーマ幹細胞の代謝可塑性に注目し、さらに詳しく解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの解析の結果、グリオーマ幹細胞には、エネルギー産生に解糖系を利用する群と酸化的リン酸化を利用する群のそれぞれが存在することが分かった。当初その多様性を生み出す要因を解明するために、ミトコンドリアに着目した実験を行なっていた。しかし、その解析を行う中で、酸化的リン酸化を利用する群は、環境によって代謝を可逆的に解糖経路に変換することができ、可塑性を有していることが新たに明らかになってきた。この結果は、グリオーマ幹細胞の代謝を治療ターゲットとする際に考慮しておくべき重要な所見であり、今後、可塑性を制御するメカニズムを分子レベルで解明してくことで、より効果的な治療戦略の開発が進むことが期待できると考えられ、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
代謝阻害剤として、オリゴマイシンのみではなく解糖系の阻害剤である2-deoxyglucose(2-DG)を投与し、GSC GLYにおいて酸化的リン酸化への代謝変換が起こるかどうか、またGSC TCAに対してはどのような作用を及ぼすかを検証する。また、阻害剤以外に環境によっても解糖経路を酸化的リン酸化経路との間の代謝変換が起こるかどうかについて調べるために、腫瘍内の低酸素領域を想定し、低酸素下におけるGSCの代謝特性を調べる。特にGSC TCAにおいて、低酸素下という環境によっても酸化的リン酸化から解糖系への代謝可塑性を示すかどうかを検証し、代謝可塑性が示された場合は、この代謝可塑性の制御因子を同定する。
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Research Products
(4 results)