2015 Fiscal Year Annual Research Report
マウス精巣における固定的精原幹細胞ニッチの誘導メカニズムの解明
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15J10266
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
貴志 かさね 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | セルトリバルブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウス精巣における新規の「固定的精原幹細胞ニッチ」を構成するセルトリバルブ細胞の誘導メカニズムの解明を目的としている。セルトリバルブ細胞は、精子形成の行われる曲精細管と、賛成された精子が集められ精巣上体へと運ばれる経路である精巣網の境界に存在する特殊なセルトリ細胞である。セルトリバルブ細胞の誘導は、精巣網より分泌される因子により引き起こされると仮説を立て、セルトリバルブ細胞を含むセルトリ細胞を除去したマウスに、曲精細管セルトリ細胞を移植したところ、精巣網隣接領域に定着したセルトリ細胞はセルトリバルブマーカーを発現し、精子発生が抑制されることが示された。この事から、セルトリバルブ細胞は細胞非自律的に形成され、精巣網隣接領域という位置情報が重要である事が解明された。この成果に関し、日本繁殖生物学会大会にてポスター発表を行った。さらに、セルトリバルブの分子基盤の解明のため、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。精巣網・セルトリバルブ・曲精細管、それぞれの領域から組織を採取し、RNAを精製し解析を行った結果、セルトリバルブ領域、精巣網領域で特異的に発現の高い因子が明らかとなった。これらの因子に関し、リアルタイムPCRを行い、それらの因子の定量的な発現解析も行った。今後さらにin situ hybridazationも行い、発現細胞の同定を行う。更に、精巣網分泌因子の候補を精巣に作用させ、セルトリバルブ化の度合いを評価する。これらの事により、精原幹細胞ニッチの新たな知見が得られると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度、マウス精巣における固定的精原幹細胞ニッチの誘導メカニズム解明のため、当研究室で作出したAMH-TRECKマウスを用い、幼若曲精細管セルトリ細胞によるセルトリバルブの再構築を試み、成功させた。この事により、セルトリバルブは細胞非自律的に形成される事が示された。この成果に関し、日本繁殖生物学会大会にてポスター発表を行った。また現在、国際雑誌に論文として投稿するため準備中である。更に、セルトリバルブの分子基盤を解明するため、マイクロアレイ、リアルタイムPCRを行い、CYP26A1の発現がセルトリバルブ領域特異的に高いという事を解明した。また、精巣網からの分泌因子としてFGF9やTGFβが候補として挙がった。
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Strategy for Future Research Activity |
セルトリバルブ領域特異的因子としてCYP26A1が挙がったため、今後in situ hybridazationにより、発現細胞を特定する。また、CYP26A1はレチノイン酸の分解により生殖細胞の減数分裂を抑制していることが知られているため、セルトリバルブ領域では領域特異的にレチノイン酸が分解され、減数分裂が抑制され、精原幹細胞が多い状態に保たれていると仮説をたて、今後はレチノイン酸の投与によるセルトリバルブ細胞のニッチ能の評価を行う。また、セルトリバルブ誘導因子としての精巣網分泌因子の候補であるFGF9やTGFβに関しても、in situ hybridazationを行い、発現を解析する。また、当研究室で開発したタンパク質吸着ビーズ移植法により、候補因子を精巣へ局所的に作用させ、その領域のセルトリバルブ化を評価する。
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Research Products
(3 results)