2016 Fiscal Year Annual Research Report
高視野高速掩蔽モニター観測による太陽系外縁部の解明
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15J10278
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
有松 亘 国立天文台, 天文情報センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 太陽系天文学 / 太陽系外縁部 / 高時間分解能天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の前半には、平成27年度の研究で開発した小型広視野高速観測システムの試作機を基に、改良版の観測システムを計2台開発した。開発した観測システム改良機については『沖縄県立宮古青少年自然の家』(沖縄県宮古島市)の協力のもと、同施設の屋上に設置し、平成28年6月から9月にかけて断続的掩蔽同時モニタ観測を実施した。 モニタ観測では15.4Hzのフレームレートで銀河面と黄道の交点付近の多数の恒星を2台の観測システムで同時に観測した。 平成28年度の後半には、モニタ観測で得られたデータの解析を進めた。平成27年までに作成していた解析パイプラインを改良することにより、観測データ内に写り込んだVバンドでの見かけの明るさが13.5等よりも明るい約4000個の恒星を同時に測光することができることを実証した。この結果は、本研究で開発した観測システムが、既存の観測装置の中では最も効率よく多数の恒星を同時に高速測光できる観測装置であり、発生確率が極めて小さいTNOによる恒星掩蔽現象を検出できる可能性があることを実証するものである。本研究結果に関しては平成28年9月の日本天文学会秋季年会および平成29年3月の日本天文学会春季年会で発表を行った。また、同内容に関する論文を作成し、投稿した。さらに、モニタ観測で得られた観測データを詳細に分析した結果、見かけの明るさが5等-10等の微光流星が2台の観測システムで同時に観測されていることがわかった。こうした現象を複数台の観測装置で同時検出できた例はこれまでほとんどなく、本研究が開拓している可視高時間分解能天文学の威力を示すものである。現在、観測された微光流星について解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄に記載した通り、平成28年度には太陽系外縁天体による恒星掩蔽を検出するための観測システムを開発し、掩蔽検出を目指したモニタ観測を実行した。また観測データの解析パイプラインの作成も達成した。以上の進捗は平成28年度の実行計画をほとんど達成したと考えられる。これらの成果に加え、開発した観測システムを用いた微光流星などの既存の観測装置ではほとんど観測例のないトランジェント現象の観測にも成功した。こうした観測成果は本研究が最終的に目指していた高時間分解能天文学の開拓につながるものであり、当初の計画以上に進展していると考える。以上から、本研究は全体として概ね順調に進展していると結論づける。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も、平成28年度に引き続き、作成した掩蔽モニタ観測システム2台を用いたモニタ観測を継続する。
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Research Products
(3 results)