2015 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子組換えニワトリを用いたインフルエンザワクチン製造の効率化に向けた研究
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15J10381
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥嵜 雄也 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子組換えニワトリ / インフルエンザワクチン / 糖転移酵素 / Phic31インテグラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
Phic31依存的にsia-alpha2,6-Gal糖鎖の合成を行うニワトリsialyltransferase6-1(ST6-1)を発現する遺伝子組換えニワトリの作製を試みた。遺伝子組換えニワトリを取得する方法としては、転卵2.5日胚の心臓にレトロウイルスベクターをインジェクションし、作製した初代キメラニワトリを交配しスクリーニングする方法を採用した。インジェクションには高濃度のレトロウイルスベクターが必要であるため、初めにこれを生産するパッケージング細胞の取得を試みた。その結果Phic31発現レトロウイルスベクターについては>1x10の10乗 cfu/ml、誘導型ST6-1発現レトロウイルスベクターについては>1x10の9乗 cfu/mlの力価でウイルスを産生するパッケージング細胞の取得に成功した。これらパッケージング細胞を用いて作製した高力価ウイルスベクターを、ニワトリ2.5日胚の心臓に遺伝子導入し、遺伝子組換え初代キメラニワトリを作製した。作製した初代キメラニワトリは孵化後すぐに血液中の組換え遺伝子のコピー数を定量PCRにより測定した。これにより血中組換え遺伝子コピー数がおおよそ0.5コピー以上で、生殖細胞へのウイルスの感染が期待できる個体について性成熟するまで飼育を行った。次いで、性成熟した雄鶏については精子中の組換え遺伝子コピー数を測定した。その結果、Phic31遺伝子組換えニワトリについては最高で0.1コピー程度、誘導型ST6-1発現遺伝子組換えニワトリについては最高で0.01コピー程度の組換え遺伝子コピー数を持つ遺伝子組換えニワトリを作製することに成功した。現在これら遺伝子組換えニワトリを交配し、孵化したヒヨコをスクリーニングすることで、目的とする遺伝子組換えニワトリ後代の取得を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子組換えニワトリを取得するためには高濃度のレトロウイルスベクターが必要である。本年度においてはPhic31発現レトロウイルスベクターをについては>1x10の10乗 cfu/ml、誘導型ST6-1発現レトロウイルスベクターについては>1x10の9乗 cfu/mlの力価と、非常に高濃度でレトロウイルスを産生するパッケージング細胞を取得することができた。これらウイルスを用いて作製した初代キメラニワトリは血中の組換え遺伝子コピー数で0.5~4程度のコピー数を有し、また雄鶏の精子中では最大で、Phic31遺伝子組換えニワトリについては0.1コピー程度、誘導型ST6-1発現遺伝子組換えニワトリについては0.01コピー程度の組換え遺伝子の導入が確認できている。現在これら遺伝子組換えニワトリの交配・スクリーニングを行っている。このまま継続して交配・スクリーニングを行うことで目的とする全身で1コピーずつ組換え遺伝子を持つ遺伝子組換えニワトリの作製が可能であると予測され、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に作製したPhic31、誘導型ST6-1の各組換え遺伝子を持つ遺伝子組換え初代キメラニワトリについて、それぞれ交配・スクリーニングを行い、目的とする遺伝子組換えニワトリを取得する。また、目的とする遺伝子組換えニワトリの取得効率を上げるために、追加で転卵2.5日胚の心臓にレトロウイルスベクターをインジェクションし、初代キメラニワトリの母数を増やす。またこれとは別に、始原生殖細胞に対してもPhic31、誘導型ST6-1遺伝子の遺伝子導入を行い、初代生殖キメラニワトリを作製する。これらについても同様に交配・スクリーニングを行い、目的とする遺伝子組換えニワトリの取得を目指す。取得できた遺伝子組換えニワトリは性成熟するまで飼育した後、Phic31,誘導型ST6-1遺伝子組換えニワトリ間でそれぞれ交配を行う。これによりST6-1の発現が誘導された受精卵を用いて、インフルエンザウイルスの感染実験およびインフルエンザワクチンの生産実験を行う。
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Research Products
(4 results)