2015 Fiscal Year Annual Research Report
薬物依存問題を持つ人の家族のニーズ実態と福祉支援に関する実証的研究
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15J10387
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Research Institution | Japan College of Social Work |
Principal Investigator |
安髙 真弓 日本社会事業大学, 社会福祉学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 薬物依存問題を持つ人の家族の福祉ニーズ / 薬物依存問題を持つ人の家族支援の実態 / 薬物依存回復施設調査 / 薬物依存問題を持つ人の家族支援の知見の集積 / 薬物依存問題を持つ人の家族支援の専門的援助項目 |
Outline of Annual Research Achievements |
第四次薬物乱用防止五か年戦略(薬物乱用対策推進会議2013)では、「薬物乱用者に対する治療・社会復帰の支援及びその家族への支援の充実強化による再乱用防止の徹底」が目標2に掲げられ、家族には「薬物依存問題を持つ人の長期の回復を支え、再乱用防止の観察者の役割を持つ」ことが期待されており、問題発生によって長期に影響を受ける家族自身を支援の対象とする視点は乏しい。 そこで、本研究では、薬物依存問題を持つ人の家族の福祉ニーズを明らかにすること、関係機関で現在行われている家族支援の実態の把握、長期に渡って継続的に家族支援を行っている専門職が実践にあたりどのような点に着目し、重視しているか、家族支援の専門的援助項目の把握の3点を目的として、以下3点を実施した。 1.薬物依存問題を持つ人の家族の福祉ニーズを明らかにするための予備調査として、家族会および家族のためのセルフヘルプ・グループ、薬物依存回復施設のフォーラムなどへのフィールドワーク(参与観察)。 2.薬物依存回復施設で行われている家族支援についての調査(予備調査としてのフォーカス・グループインタビューおよび全数調査)の実施。精神保健福祉センター等の公的機関で対応しきれない相談の多くが薬物依存回復施設によって行われていることが予測されたが、これまで回復施設を対象とした本格的な調査は実施されてこなかった。本調査の結果により、当事者のための回復施設が家族支援をも行っている実態が明らかになった。 3.薬物依存問題を持つ人の家族支援を長年に渡って実践してきた援助職者に対するインタビューの実施。薬物依存問題を持つ人の家族支援の継続的支援に関する専門的な実践の蓄積は乏しく、薬物依存問題を持つ人の家族支援を長年に渡って実践してきた援助職者の知見の集積は、今後の家族支援について貴重な示唆を与えるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.フィールドワーク(参与観察)については、(1)NA(薬物依存問題を持つ人の相互援助グループ。以下相互援助グループは、SHGと表記)、ナラノン(薬物依存問題を持つ人の家族や友人のためのSHG)などSHGおよびSHGが主催するコンベンションや地域フォーラム等へ参加した。(2)薬物依存回復施設ダルクのフォーラムについては、ダルク30周年記念フォーラム、九州ダルク、宮崎ダルク、大分ダルクの各フォーラムに参加した。また、ダルクの特定非営利活動法人アジア太平洋地域アディクション研究所(略称 NPO法人アパリ)が主催する「コレカラノカイフクシエン」講演会に、3回出席した。また、東京都下の2ダルクの運営委員会に定期的に出席した。 2. 2.薬物依存回復施設で行われている家族支援についての調査については、予備調査としてダルク施設長10人を対象としたフォーカス・グループインタビューを2015年6月に、ダルクの全数調査(支部等を除く59か所を選定)を2016年2月に実施した。予備調査の結果は、26回日本嗜癖行動学会札幌大会にて発表した。ダルクの全数調査では、48か所から回答を得た(回収率82.8%)。調査・研究の成果は、2016年7月に日本福祉社会学会(奈良)にて発表予定である。 3.薬物依存問題を持つ人の家族支援を長年に渡って実践してきた援助職者に対するインタビューについては、2015年8月より調査を開始し、8名のインタビューを実施した。インタビュー対象者の職種は、精神保健福祉士5名、精神科医師2名、弁護士1名である。医療、福祉、法、当事者の回復施設と家族支援の視点を幅広く網羅出来ていると考える。2016年度に追加および確認のため何回かインタビューを実施する予定である。調査結果については、2016年7月に日本ソーシャルワーク学会(京都)において発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度に引き続き、以下について実施する。 1.フィールドワークの継続実施 2.家族のニーズ実態調査の実施。昨年実施した、フィールドワーク、薬物依存回復施設ダルクにおける家族支援の実態に関する調査、専門職インタビュー調査の結果をふまえつつ、家族のニーズ実態調査を行う。調査票は、各県、政令市に設置してある精神保健福祉センターを通じて家族に配布するほか、家族のSHG参加者に調査協力を依頼して行う。まず、2016年6月に開催される全国精神保健福祉センター調査において調査研究の依頼を行うとともに調査票を配布する。調査票は郵送にて家族から直接返信していただき、回収する。調査の結果は、2016年9月の日本社会福祉学会において発表する予定である。 3.本研究によってすでに実施した各調査について、学会での発表および、各学会誌への論文投稿を行う。予定している学会発表は、2016年6月福祉社会学会(奈良)、7月日本ソーシャルワーク学会(京都)、9月日本社会福祉学会(京都)、10月日本病院地域精神医学会(東京)である。投稿を予定している学会誌は、日本社会福祉学会「社会福祉学研究」、日本嗜癖行動学会「アディクションと家族」、日本ソーシャルワーク学会「ソーシャルワーク学会誌」である。 *研究を推敲する上での問題点として、2.家族の福祉ニーズ調査の実施が厚生労働科学研究 研究班が行う家族の実態調査と対象および研究協力機関が重複することによる調査票の回収率が下がる可能性が挙げられる。調査内容については調査視点が異なるため重複は回避かのうであるが、回収率の低下については、個別のインタビューの実施で調査内容を補うことを検討している。具体的方法としては、調査票末尾に個別インタビューへの協力をお願いする文章を添付し、個別インタビュー協力者を募る予定である。
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Research Products
(2 results)