2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J10437
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
王 昊凡 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 職人的技能 / グローバル化 / 徒弟制 / 食文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は上海の都心部にある寿司店を訪ねた。申請書で設けた問いに沿って、現時点で得られた知見を述べる。 ①日本国外において、産業としての寿司店は如何に成り立つのか。(1)生食向け魚介の品質管理と調理:高級寿司店で用いる日本産生鮮魚介は高価だが、旬に合った品質の良いものを多品種入荷できる。多品種にわたる魚介の鮮度管理には知識・判断力が必要となる。一方で大衆寿司店は日本産生鮮魚介を用いることができないため、仕入れは少品種で品質が不安定となる。入荷時点で鮮度が落ち、生では食べられないような不良品を取り除くために、知識・判断力をもつ料理人が「目利き」をしなければならない。2つの類型とも、料理人の知識や判断力をもって食中毒を防止しようとしているのである。(2)中国人料理人の技能習得:料理人らは料理長を長とする集団を形成して働いている。入荷や調理で必要な技能は、徒弟制にもとづいて3から10年程度の修業がなされる。働きながら学ぶ技能は実践的であり、画一化されていない。(3)店舗内での意思決定:ほとんどの寿司店は出資者が料理長や料理人を雇用しているが、技能や知識をもつ者なしに寿司店を運営できないことを理由に、料理長は価格決定権・メニュー決定権・人事権を付与されている。 ②日本国外において、寿司店ではどのような消費が可能なのか。(1)店内で多様な商品を選択できる:高級店では魚介の多品種さが握り寿司の多品種さに直結する。大衆店では握り寿司に加え、料理人らがそれまで学んだ技能をもとに新しいロール寿司や押し寿司を開発することで、多様な商品を提供している。(2)店ごとに個性がある:徒弟制で習得する技能は画一化されていないため、自ずと料理人には多様性がある。それに加え、調理法を改善したり新メニューを開発する方向性は誰にも統制されていないため店ごとに異なる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外でのフィールドワークを順調にこなしており、有益な知見を得られている。調査は大部分が完了し、2年目は追加調査を行いつつ、データの整理を行っていくこととなる。 その知見をもとに、学会報告や論文投稿などをこなし業績を生産しつつある。2年目は得られたデータを適切に分析することに重きをおくことになるだろう。 博士論文の執筆を行うためには、得られた知見の社会学的意義を展開することに取り組んでいく必要があり、次年度での取り組みが求められる。
|
Strategy for Future Research Activity |
マクドナルドなど多国籍企業による食文化のグローバル化では、ローカルな文脈に左右されることなく世界中にチェーン店を展開するシステムが採用されている。一方で上海の寿司店では、地元出身者を職人として育成し、現地の消費者とコミュニケーションをとって適した商品をつくるなど、ローカルな要因に柔軟に適応することで成立していることがわかった。では上海以外の都市でも、その都市にあるローカルな要因に柔軟に適応できるのだろうか? そこで、上海と同様の調査をロサンゼルスで行い、比較検討を行う。
|