2015 Fiscal Year Annual Research Report
豚レンサ球菌症の発症に関わる類縁菌の協働と口腔細菌叢の役割の解析
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15J10486
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 沙倉 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 豚レンサ球菌 / 口腔内細菌 / real-time PCR / メタ16S解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
健康豚および病豚から唾液を採取し、比較解析することで、豚口腔内におけるStreptococcus suisとその類縁菌であるS. parasuisの協働とS. suis感染症発症との関連を明らかにすることを目的としている。これを達成するために、母豚と子豚、同一個体の異なる飼育時期、および健康豚と本菌感染・発症豚から唾液を採取した。今まで複数の豚農場から250検体の唾液検体を収集した。ここから、DNAを抽出し、S. suis特異的なreal-time PCRによって、唾液中に含まれるS. suisの量を測定した。その結果、これまで供試した全ての唾液検体で陽性であり、およそ2.6E+6の総菌数中に含まれるS. suisの量はおおよそ1.0E+4から1.0E+5程度であることがわかった。培養法による報告では子豚で30-40%、成豚で50-60%がS. suisを保菌していると考えられてきたため、今回のように100%保菌率であることは新知見である。 次に、次世代シーケンサーによるメタ16S解析を行なった。現在までに58検体の成績を得ており、細菌属レベルの解析で、母豚とそこから生まれた子豚では唾液中の菌の構成が似ていることがわかった。 さらに、健康な豚を対象に、生後直後から時間を追って口腔内細菌叢がどのように変化するのか観察した。同一個体の哺乳期と離乳期で唾液を採取したところ、生後3日齢の哺乳子豚の唾液中でも母豚と同程度のS. suisを含んでいることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複数の豚農場から250検体の唾液検体を収集し、DNAを抽出後、その中に含まれる菌DNA量(総菌数)を測定するために16S rRNA遺伝子を標的にしたreal-time PCRを行った。菌DNA換算値で5ng/μlに希釈した。当初はLAMP法によって検体中に2種類の菌が含まれているか定性的に評価する予定だったが、新たにreal-time PCR (S. suis特異的real-time PCR: qPCRSSおよびS. parasuis特異的real-time PCR: qPCRSP)を開発したため、この2種類のreal-time PCRをそれぞれの唾液検体に供試した。現在qPCRSSは7割の検体で完了し、今後qPCRSPを行う予定である。qPCRSSの成績では、これまで供試した全ての唾液検体で陽性であり、およそ2.6E+6の総菌数中に含まれるS. suisの量はおおよそ1.0E+4から1.0E+5程度であることがわかった。培養法による報告では子豚で30-40%、成豚で50-60%がS. suisを保菌していると考えられてきたため、今回のように100%保菌率であることは新知見である。 さらに、上述の1.で5ng/μlに希釈したDNAをメタ16S解析に供試した。現在までに58検体の成績を得ている。細菌属レベルの解析では、母豚とそこから生まれた同腹子豚では唾液中の菌の構成が似ていることがわかった。しかし、細菌種レベルの解析には検討が必要である。その要因はS. suisおよびS. parasuisの16S rRNA遺伝子配列の相同性である。元々S. parasuisはS. suisの血清型の一部として認識されていた。そのため、メタ16Sのデータをインターネット上のDatabaseに照らし合わせてしまうと、S. parasuisはS. suisとして認識されてしまう。これを解消するため、現在新たにStreptococcus属菌に特異的な16S rRNA遺伝子のDatabaseを構築している。 また、生後直後から時間を追って口腔内細菌叢がどのように変化するのか観察したところ、生後3日齢の哺乳子豚の唾液中でも母豚と同程度のS. suisを含んでいたため、今後は生後直後から唾液を採取する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に農場から得られた唾液検体の多くは健康豚由来であるため、今後は病豚唾液を中心に採取する。また、唾液中のS. suisについてはreal-time PCRによる解析が進んでいるが、S. parasuisについては方法は確立しているものの、解析が追いついていないため、今後進めていく。 次に、メタ16S解析では、一度のrunに14検体しか入れ込めないため、供試したサンプル数が不足している。今後は上述した病豚由来唾液検体も追加し、新しく開発したStreptococcus属菌に特異的な16S rRNA遺伝子のDatabaseを使用して、種レベルの解析を進めていく。 さらに、同一個体の経時的な観察では、生後直後から細かく時間を設定して唾液を採取し、S. suisが口腔内に定着していく様子を観察する。
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Research Products
(7 results)