2015 Fiscal Year Annual Research Report
非集束型低エネルギー超音波とバブル製剤による脳内への薬物送達技術の構築
Project/Area Number |
15J10508
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小俣 大樹 帝京大学, 薬学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 超音波 / 超音波造影剤 / ドラッグデリバリー / 脳 / マイクロバブル |
Outline of Annual Research Achievements |
血液と脳の間の物質移動を厳密に制御する血液脳関門が存在するため、脳への薬物送達には血液脳関門の機能を制御する薬物デリバリー技術の開発が重要となる。そこで本研究では、脳内へ効率的に薬物を送達するために、脳に対して非侵襲的かつ広範囲での血液脳関門透過性を亢進可能なバブル製剤と非集束型の低エネルギー超音波を組み合わせた技術の構築を目指す。 本年度はまず脳内への薬物送達に向けたバブル製剤の調製を行った。生体内で高い安定性を示すバブル製剤を用いることで、超音波照射を長時間行うことが可能となり、最終的に薬物送達効率の向上につながると考えられる。異なるリン脂質を殻とするバブル製剤を調製し、マウスにおいて静脈内投与後の安定性を心臓の超音波造影により評価した。その結果、長鎖のアシル基を持つ脂質およびアニオン性脂質から構成されるバブルを投与した際に、持続的な超音波造影が可能であった。次に、非集束型超音波とバブル製剤の脳に対する傷害性について脳切片のHE染色により評価したところ、低強度かつ高周波数の超音波を使用した際に、脳に対する大きな傷害は認められなかった。続いて、モデル薬物としてエバンスブルーを使用し、血液脳関門透過性亢進についてエバンスブルーの脳内への移行量を指標に評価した。エバンスブルーとバブル製剤を尾静脈投与後、マウス脳の右半球に経頭蓋的に非集束型超音波を照射した。血液還流後、脳を摘出し左半球と右半球のエバンスブルー移行量をそれぞれ測定した。その結果、非集束型超音波を照射した右半球においてエバンスブルーの移行量が上昇した。さらに、直径の大きな超音波照射プローブを使用することで、脳のより広範囲にエバンスブルーを送達可能であった。以上のことから、非集束型超音波とバブル製剤を用いることで、低侵襲的に血液脳関門透過性を亢進可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はバブル製剤を調製し、バブル製剤の投与量、超音波照射強度、周波数、照射時間などの基礎的な条件の検討を行い、バブル製剤と適切な超音波照射条件を用いることで、低侵襲的に血液脳関門透過性を亢進可能であることを示した。特に、超音波周波数の違いにより、脳に対する傷害性が異なることを示し、安全性の高い薬物送達システム開発のための重要な結果が得られた。より詳細な傷害性の評価や薬物送達範囲の評価に関しては検討を加える必要があるが、当初の実験計画の検討項目をほぼ進めることができたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
バブル製剤と非集束型超音波による脳への傷害性および血液脳関門の透過性亢進に関する特性について検討する。脳に対する傷害性についてHE染色により大きな傷害が認められないことを示したが、より詳細な傷害性について評価するため、神経細胞染色試薬を使用し、神経細胞への傷害性を検討する。また、血液脳関門の透過性亢進範囲について、モデル薬物としてエバンスブルーを使用し、非集束型超音波と強力集束型超音波の比較検討を行う。低分子化合物だけでなく抗体などの高分子化合物も治療用薬物として有用であるため、異なる分子量の蛍光標識デキストランを用い、高分子量の化合物を脳内へ送達可能か評価する。さらに、血液脳関門の透過性亢進後、一定時間後に透過性が回復することが安全性を担保する上で望ましいと考えられるため、バブル製剤と非集束型超音波照射による血液脳関門の開放時間、回復時間について検討する。
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Research Products
(1 results)