2015 Fiscal Year Annual Research Report
短・超短パルスレーザ時空間ビームシェイピング技術開発と微細加工への応用
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15J10556
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
KIM BYUNGGI 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 液体光学素子 / レーザスクライビング / ベッセルビーム / プラズマ遮蔽 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザビームの時間強度分布シェイパの開発とそれを用いたエネルギーデバイスの微細加工への応用を睨んで,2015年度には(1)液体光学素子における自然対流の影響の解明と(2)薄膜型太陽電池向けの透明導電薄膜のナノ秒パルスレーザベッセルビームスクライビングに取り組んだ. (1)について:液体光学素子の動作阻害要因となるレーザ加熱による自然対流の発生とその影響について実験とCFD,ビーム伝搬法を用いたシミュレーションにより検討した.その結果,自然対流の発生を抑えるためには液体光学素子の厚みを小さくし,自然対流によるビームプロファイルの歪みの抑制には検出光の光軸補正が必要であることが分かった.また,本研究で用いたシミュレーション手法を用いることで,自然対流を考慮した液体光学素子の設計が可能であることを示した. (2)について:本研究では,単一パルス照射による透明導電膜の完全な除去が可能な基板側照射の加工メカニズムを明らかにすること,回折限界を超える集光が可能なベッセルビームを用いることで加工精度を向上させることを目的とした.まず,時分解計測により加工中のレーザビームのプロファイル変化を調べ,さらに加工結果を観察することで透明導電薄膜はレーザの照射方向にかかわらずその表面から熱的に除去されることを示した.そのとき,表面におけるプラズマの遮蔽のため基板側照射の場合のみ単一パルス除去が行われることが分かった.また,ベッセルビームを用いた加工を施し,絶縁性のある幅数ミクロンのスクライビングに成功した.このとき,ベッセルビームは優れた焦点深度を持つことから,光軸方向の試料位置決めのロバスト性が向上されることも分かった.本研究によりレーザ薄膜スクライビングにおけるベッセルビームの有効性を示されたとともに,加工メカニズムが明らかにされ,光学系の高度化に資することが可能であったと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度には研究計画調書に記載したとおり,微細加工用レーザ光学系の高度化を目指して,液体光学素子の検討と現有のNd:YAGナノ秒パルスレーザ光源を用いた微細加工実験系の作成を行なった.まず,液体光学素子に関しては自然対流の影響を支配するパラメータを検討した.また,アキシコンレンズを用いたベッセルビームシェイパをデザインし,Nd:YAGナノ秒パルスレーザの基本波長の1064 nmのビームを高品質ベッセルビームに整形することができた.そのベッセルビームを用いて薄膜型太陽電池の透明導電薄膜として用いられるフッ素ドープ酸化スズ薄膜に対する加工実験を施した結果,従来のガウシアンビームシステムに対して加工精度とロバスト性を大幅に改善することができた.また,加工メカニズムを調べることで照射方向の影響を明らかにすることも可能であった.今後,ビームシェイピング光学系をさらに高度化し,SiC等の他の材料の加工に応用することにより,研究の幅が広がっていくと考えられる. しかし,5月から8月にかけて渡航していたニューヨーク州立大学においてはフェムト秒パルスレーザが使用不可の状態となっていたため,フェムト秒パルスレーザを用いた実験データの取得はできなかったので、関連する文献調査を精力的に実施した.今後,超短パルスレーザに関しては数値解析等の手法を代替に用いることで,ビームシェイピング特性,微細加工現象等に関する検討を行なっていく必要があると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2016年度について:研究計画調書で示したとおり,昨年度作成した光学系を用いて,さらに高度なビームシェイピング実験と様々な材料に対してのレーザスクライビング,ビア加工実験を施していく.なお,2015年度の加工実験結果から,透明材料の熱加工においては周囲環境への熱伝達により加工メカニズムが左右されることが分かったため,水中・空気中加工等の比較実験も行なう.加工精度の向上,加工メカニズムの解明を狙い,エネルギーデバイスにレーザ加工を用いる場合の有用性について検討する.特に,ビームシェイピングに関しては,昨年度までは空間強度分布変調に集中していたが,2016年度には液体光学素子を用いた空間強度分布変調も試みる計画である.時間強度分布変調により過渡的な集光制御,パルス幅短縮等が可能となると考えられ,その実験的な検討を施す. (2)2017年度以降について:前年度までの実験結果をもとに,光学パラメータと加工メカニズムの関係について明らかにするために,加工現象の理論的な検討を中心に研究を遂行する.固体材料におけるクラックの発生,加工中の輸送現象等について幅広い考察を行うことを目指す.必要に応じてパラメートリックな加工実験を行い,時分解計測も利用する.このことにより,ビームプロファイルの時空間変調を用いた新たな短・超短パルスレーザ加工手法を提案し,エネルギーデバイスプロセッシングの高度化に資することを睨む.
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Research Products
(6 results)