2015 Fiscal Year Annual Research Report
マヨラナ束縛状態を利用したトポロジカル量子演算の基礎研究
Project/Area Number |
15J10568
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
SOZINHO AMORIM CASSIO 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | マヨラナ粒子 / 量子情報 / 量子演算 / トポロジカル量子演算 / 量子ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トポロジカル超伝導体ナノワイヤの端状態として出現するマヨラナ束縛状態を対象とし、ナノワイヤ接合系上のブレディングダイナミクスの数値シミュレーションを行っている。ブレイディング(braiding)とは、低次元空間において行われる粒子交換過程のことを指す。従来の粒子は、交換によって波動関数の位相の変化は起こり得るが、それ以上の変化が見えない。一方、特殊な場合に限って、交換過程の順番などによって状態遷移が起こる可能性もある。このような現象を示す粒子は非可換エニオンと呼ばれる。マヨラナ束縛状態はこの非可換エニオンの一種となり、独特な非可換統計性を示す。その統計を理解するために、数値計算を行っている。 非可換エニオンの一つの重要な応用は、トポロジカル量子演算の実現である。これは、粒子の交換を使って情報を制御するというもので、粒子交換以外の方法では状態に影響を及ぼさないことから、安定な量子演算ができると期待されている。これを目指して、本研究では量子演算に相当するブレイディング過程の実現条件を詳しく調べている。マヨラナ束縛状態のブレイディングによってCliffordゲートがのみが実現できるが、量子メモリなどの応用にはそれだけでも十分な安定性が得られると期待できる。 上記を踏まえて、これまではNOTゲートとHadamardゲートの2種類のCliffordゲートを調べ、実現と制御条件を調べている。NOTゲートに関する結果をまとめた論文を投稿した(PRB, 91, 174305, 2015)。その内容はNOTゲートの実現系を作製するように操作時間ナノワイヤ長の見積もりが載せてある。Hadamardゲートの場合にも同じく評価を行っているが、重要な特徴であるエンタングルメントの評価を完全にできていないため、今後の課題として取り込んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では、単粒子の波動関数を考え、様々な条件の下でシミュレーションが行った。まずは、一番シンプルなブレイディング過程として二つのマヨラナ束縛状態を繰り返して交換し、状態遷移を計算した(PRB, 91, 174305, 2015)。これはNOTゲートに相当し、量子演算には不可欠な操作になる。ユニバーサル量子演算を実現するため、CNOTゲートが必要となり、NOTゲートがその一部の要素として要求される。次のステップとして他のCliffordゲートを調べることは自然な延長である。そこで、Cliffordゲートの一種であるHadamardゲートのダイナミクスの数値シミュレーションを行った。Hadamardゲートは、量子縺れの生成のためなどに重要な役割を果たし、数多くのプロトコルとアルゴリズムに不可欠である。 以前に使った系を拡張し、Hadamardゲートに相当するブレイディング過程のシミュレーションを行った。解析的にこのような交換過程で得られるエンタングルメントを評価するための数式を導き、それに併せてダイナミクスの数値シミュレーションを行った。Hadamardゲートの実現条件と特性を数的に調べ、以前の結果と同様に評価した。期待される動作を数値的な実験から得られた。しかしながら、シミュレーション結果が良い傾向を示したとは言え、エンタングルメントの評価は単粒子波動関数だけでは疑問の余地を完全に排除できたとは言えない。そして、本研究計画であるより複雑なナノワイヤネットワークを調べることに当たってこのような手法が扱いきれない系に向かうため、計算手法の拡張と改善に注目する段階に入っている。それは、多体系を扱う手法として、テンサーネットワーク等で表現した波動関数と時間発展演算子を利用することになる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、テンサーネットワーク等の手法知識や経験を獲得するための計画をLuca Tagliacozzo博士と話し合っている。スコットランドのストラックライド大学のlecturerであるTagliacozzo博士はテンサーネットワークの分野に大きく貢献しており、日本との良好な関係と共同研究もある。今年の後半、ストラックライド大学に数ヶ月の滞在を検討している。また、12月に出席した国際会議において、他の研究者と議論した結果、多体効果を入れることは重要だと認識したが、他により簡単なアプローチもあり得るので、それも今考えている。 さらに、より複雑な操作を調べるように、他の手法も使えるかを調べており、特にフェルミオン系の独特なGrassmann代数に基づいた手法を検討している。
|
Research Products
(6 results)