2016 Fiscal Year Annual Research Report
マヨラナ束縛状態を利用したトポロジカル量子演算の基礎研究
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15J10568
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
SOZINHO AMORIM CASSIO 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | トポロジカル量子演算 / マヨラナ粒子 / 量子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マヨラナ粒子をを用いたトポロジカル量子演算を対象とし、遂行している。マヨラナ粒子は素粒子理論から生まれた概念ではあるが、最近物性物理学でも実現可能と認識され、注目が集まっている。具体的に、個体系では、トポロジカル超伝導のエッジ状態として現れるものである。エッジに局在する束縛状態として現れるマヨラナ束縛状態を制御できるとトポロジカル演算が実現できると期待されている。本研究では、このマヨラナ束縛状態の制御を数値シミュレーションによってダイナミックスを解析している。 また、トポロジカル系である限り、非自明な性質をいくつもっている系であることも知られている。例えば、基底状態でもエンタングルメントがあり、トポロジカルエンタングルメントが存在する系である。この性質より、例えばマヨラナ束縛状態の交換によって量子テレポーてションのような現象も起きる。このような性質より、正確なシミュレーションが困難になる。正確な解析をするために、エンタングルメントを詳しく理解する必要があると判断した。 一方、エンタングルメントは物理学の基礎として長く研究されているものの、未だに明らかではない基本的な課題も残されている。例えば、1994にPopescuとRohrlichは相対論的な因果律だけでエンタングルメント強度の上限が説明できないと指摘されている。言い換えれば、エンタングルメントを制限することが知られていないということは、エンタングルメントの由来も解っていないとも言える。本研究の一つの側面として、この問題を詳しく注目している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題は、翌年度に延長(繰越)したが、おおむね順調に進んだと評価している。研究の過程で、本研究と深く関わる問題を見つけ、進め方の調整が必要になった。しかしながら、進め方の調整によって重要な成果につながることが出来ている。 マヨラナ束縛状態のダイナミックスを研究し続けるために、テンサー・ネットワーク状態及びテンサー・ネットワークを用いる計算手法を学習した。これまで単粒子近似で行った計算を多体系に拡張することを目的として、多体系に適している計算手法であるテンサー・ネットワークを、多体系で生まれるマヨラナ束縛状態に使用するつもりであった。そのために、その分野の共同研究者も探し、計算手法を取得してから本研究にその手法を転移する計画だった。 しかし、その分野の学習とともに、エンタングルメントについても様々な情報収集を行った。その結果、エンタングルメントについても明ではない課題も存在していることを知り、本研究との接点も多く認識できた。その際に、マヨラナ束縛状態に関する知識と新たに得られたエンタングルメントの基礎知識を融合することによって後者に貢献できると確信したため、当初の計画よりエンタングルメントの学習に時間を多めにかけることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
マヨラナ束縛状態のダイナミックスを理解しようと思っても、エンタングルメントのダイナミックスの知見なくして出来ないと思われるから、エンタングルメントの由来を説明する研究を継続する。そのため、情報収集及び細かい解析の研究を遂行する。 エンタングルメントに関する解析研究を行ってきたが、その結果を公開したところ十分の理解を得ることが出来なかったため、より詳しい説明が必要と判断できる。そのため、先行研究との関連をより詳しく調べるとともに、これまでの研究をできるだけ発展させて詳しい解析を追求する。同時に、本研究の今後の発展について考察し、どのようなインパクトが期待できるかを推定する計画を立てている。 また、本研究は物理学の基礎的な側面に重要な貢献になると期待されるため、本研究の論文発表はオープンアクセスにするように心掛けている。それは、正当かつ公正な研究結果をできるだけ広いオーディエンスに届くように意識しているからである。
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Research Products
(4 results)