2015 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Noble-Metal-Free Highly-Efficient Water Splitting Systems Based on the Management of Proton Transfer
Project/Area Number |
15J10583
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 徹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 水分解水素製造 / 人工光合成 / 電気化学 / 電極触媒 / 酸化マンガン / 光化学系II / バイオミメティクス / エネルギー論 |
Outline of Annual Research Achievements |
水の電気化学的分解による水素製造は、時間変動する再生可能エネルギーを貯蔵可能な化学燃料に変換できる系として注目されている。しかし、水の酸化に高い電位の印加が必要であることがエネルギー変換効率のボトルネックとなっている。特に中性領域において高活性かつ安定な触媒は高価な貴金属触媒に限られている。一方自然界では、植物の光化学系II(PSII)中のマンガン(Mn)4原子を含むクラスターが唯一水の酸化を触媒する。そのクラスターはアミノ酸に配位されており、プロトン・電子輸送が精密に制御されている。我々は以前PSIIに啓発されて、プロトンを受容する分子を導入すると正電荷が蓄積した不安定な中間体を経ずに反応が進行し、酸化マンガン(MnOx)の水の酸化活性が向上することを見出している。しかし、導入した分子が酸化分解するという問題点があった。 そこで今年度は、酸化に対し安定かつMnOxの活性を向上させる官能基を有する固体高分子を検討した。その中で、PSII中のMnクラスターに配位する3種、10個の官能基のうち7個を占めるカルボキシル基を持つ分子の添加でMnOxの活性が安定的に向上することを見出した。一方でイミダゾリル基はプロトン移動を伴う多電子酸化を受け、グアニジノ基添加時は酸素発生・酸化電流に変化は見られなかった。イミダゾリル基がPSII中では安定なのは、低い誘電率やプロトン受容体の欠如、電荷分離サイトとクラスター間に存在する電位のカスケード構造に由来している可能性をpH-電位図を用いて示した。本成果はPSIIに学ぶMn系水の酸化触媒開発において安定性やエネルギー論という視点を導入・提示したものであるとともに、PSIIクラスター周囲に豊富なカルボキシル基がMnOxの活性化にも有用であることを示したものである。本成果はChemCommに掲載され、Inside Back Coverに選ばれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化分解に対して安定かつ酸化マンガンの水の酸化活性を向上させることができる物質として、カルボキシル基を有する分子を見出すことができたため。当初の計画に加えて、植物の光化学系IIと人工のマンガン系水の酸化触媒における安定性やエネルギー論の違いについて理解を深めることもできたため。また、その結果を国際誌により発表することができ、Inside Back Coverにも選択されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の水分解システムの構築に向けて、システム中における酸化マンガンの環境に則して触媒の修飾や評価を検討する。また、添加物を用いず、酸化マンガン自体の組成変更による高活性・安定化も検討する。
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Research Products
(4 results)