2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J10597
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 光樹 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 結び目 / 4次元多様体 / Heegaard Floer ホモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
Mを閉4次元多様体、M-BをMから4次元開球を除いた空間とする。このとき、∂(M-B)上の結び目KがM-B内で張る“向き付け可能曲面の最小種数”をg[M](K)、“向き付け不可能曲面の1次元ベッチ数の最小値”をγ[M](K)、“自明なZ2係数ホモロジー類を表す向き付け不可能曲面の1次元ベッチ数の最小値”をγ0[M](K)と表す。g[M]、γ[M]、γ0[M]を結び目の集合上の関数と見たとき、これらが有界関数かどうかを調べるのが本研究の目的であった。 本年度は、まず目標の一つであったγ0[S2×S2]の非有界性を証明することができた(ここでS2×S2は球面の積多様体を表す)。本成果はトポロジーの国際誌「Topology and its Applications」に掲載された。また、昨年証明したγ0[CP2]の非有界性に関する論文が数学総合誌「Tokyo Journal of Mathematics」に掲載された(ここでCP2は複素射影平面を表す)。さらに、本研究への応用のためにHeegaard Floer ホモロジー理論について理解を深めた。その成果として、3次元多様体のあるクラスについてd不変量とよばれる不変量を計算し、その計算結果を用いてd不変量と他の不変量との相関性について知られていた予想が大きく破られることを証明した。本成果をまとめた論文はIndiana大学の数学総合誌に掲載受理されている。 また、国内外の研究集会でこれらの成果について口頭発表を行った。特に、国際会議「Synchronizing Smooth and Topological 4-Manifolds」における口頭発表では、世界中から集まったHeegaard Floer ホモロジー理論の専門家と知り合い、大変充実した議論や研究交流を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年次計画において本年度に設定した研究目標のうち、γ0[S2×S2]の非有界性を完全に証明したという点で研究は順調に進展している。特に、その証明はγ0[S2×S2]のみならず任意のスピン多様体Mに対するγ0[M]にまで拡張されており、個々の4次元多様体に対するアプローチのみを考えていた計画段階に比べると大きな飛躍といえる。 また、研究計画ではそれぞれの関数の有界性のみを問題にしていたが、特にS2×S2内で特別な円盤を張る結び目について調べることで、上述のd不変量に関する研究成果を得られた。この成果は、各関数の特別な値を実現する結び目の研究に意義を与え、本研究の新たな発展性を示唆した。 これらの経緯を踏まえて、本研究は当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、本年度得られたHeegaard Floer ホモロジー理論に関する知識を応用して、γ[CP2],g[nCP2],γ[nCP2]の有界性の決定に取り組む。その際、Heegaard Floer ホモロジー理論の基盤であるFloer理論についても理解を深め、より本研究課題に適合したホモロジー理論が構築できないかについても調査する。 また、各関数の特別な値を実現する結び目についても理解を深め、結び目の幾何的性質や不変量との関係性を解明する。
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