2015 Fiscal Year Annual Research Report
水素の結合状態変化に基づく新規錯体水素化物の創製とエネルギー関連機能の評価
Project/Area Number |
15J10604
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
李 関喬 東北大学, 大学院環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 水素貯蔵材料 / エネルギー材料 / 錯体水素化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、5 mass%以上の高水素密度を有し、室温に近い温度領域で繰り返し脱水素化・再水素化できる固体水素貯蔵材料としての新規錯体水素化物を創出するため、ホウ素系錯体水素化物LiBH4と遷移金属系錯体水素化物Mg2FeH6との複合化によって新規錯体水素化物の合成を試み、脱水素化・再水素化反応に対する複合化効果や錯イオンの特性と錯体水素化物の熱力学的安定性との相関を解明する。 単体でのLiBH4は10 mass%以上もの水素密度を有するが、錯イオンBH4において水素がホウ素原子と強固に共有結合していることに起因し、脱水素化温度は400 ℃以上と極めて高い。本研究では、LiBH4における水素-ホウ素間結合と比べ、水素が鉄原子とゆるやかに共有結合した錯イオンFeH6を有する遷移金属系錯体水素化物Mg2FeH6とメカニカルミリングを用いて複合化により、その脱水素化温度が最大150 ℃程度も低下する特筆すべき現象を見出した。粉末X線回折測定や熱重量・ガスクロマトグラフ測定の結果からは、脱水素化温度に至るまで新たな水素化物相などの形成は確認できなかったが、熱力学的安定性の差が大きいLiBH4とMg2FeH6とが複合化後は同じ温度域で脱水素化することが判明した。 上記のような複合化効果を詳細に解明するために、反応過程での熱力学パラメーターを圧力・組成・等温測定を用いて評価した結果、複合材料では、LiBH4だけではなくMg2FeH6も熱力学的に不安定化されたことで脱水素化反応が促進され、さらに再水素化反応も促進されたこと、反応過程は複合比率に依存することを実験的に明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、新規錯体水素化物の創製及びエネルギー関連機能の評価を目的としたが、平成27年度ではホウ素系錯体水素化物LiBH4と遷移金属系錯体水素化物Mg2FeH6との複合材料を合成、その複合化効果を評価した結果、複合材料ではLiBH4とMg2FeH6とも熱力学的に不安定化されたことにより脱水素化・再水素化反応が改善されたこと、反応過程は複合比率に依存することを実験的に解明した。 平成28年度では、Mg2FeH6以外のCoH5を含むMg2CoH5や、NiH4を含むMg2NiH4などの錯体水素化物とLiBH4との複合材料を合成、脱水素化反応を系統的に評価することによって、錯イオンにおける水素の結合状態と材料の熱力学的安定性との相関を明らかにする。また、材料のリチウムイオン伝導特性などのエネルギー関連機能を評価する予定がある。 以上の理由のために当該研究は、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
遷移金属系錯体水素化物には、Mg2FeH6以外にもCoH5を含むMg2CoH5や、NiH4を含むMg2NiH4など多様な錯イオンを有する材料が存在するため、LiBH4と組み合わせた複合材料の脱水素化反応を系統的に評価することによって、錯イオンにおける水素の結合状態と材料の熱力学的安定性との相関、リチウム - 遷移金属系錯体水素化物(Li-M-H、Mは遷移金属Fe, Co, Niなど)あるいは異なる錯イオンを有する新規錯体水素化物形成の可能性を明らかにすると共に、室温に近い温度領域にて繰り返し脱水素化・再水素化のできる固体水素貯蔵材料を創製する。 水素貯蔵機能に加え、LiBH4は高温相へと相転移することにより、110 ℃以上の温度領域にて極めて高いリチウムイオン伝導機能を示すことから全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質への応用が期待されている。一方で、室温でのイオン伝導性を向上するために、窒素系錯体水素化物LiNH2との複合化が有効であることがこれまでに報告されている。Mg2FeH6など遷移金属系錯体水素化物との複合化においても同様の効果が期待されるため、今後は得られた試料のリチウムイオン伝導特性についても評価し、錯体水素化物の高機能化を促進する。
|
Research Products
(13 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Simultaneous desorption behavior of M borohydrides and Mg2FeH6 reactive hydride composites (M = Mg, then Li, Na, K, Ca)2015
Author(s)
A.L. Chaudhary, G. Li, M. Matsuo, S. Orimo, S. Deledda, M.H. Sorby, B.C. Hauback, C. Pistidda, T. Klassen, M. Dornheim
-
Journal Title
Applied Physics Letters
Volume: 107(7)
Pages: 073905-1, -4
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Complex Hydrides for Energy Applications2015
Author(s)
G. Li, Y. Iijima, S. Takagi, T. Sato, M. Matsuo, A. Unemoto, K. Yoshida, T. Ikeshoji, S. Orimo
Organizer
Gordon Research Conference on Hydrogen-Metal Systems
Place of Presentation
Boston(USA)
Year and Date
2015-07-12 – 2015-07-17
Int'l Joint Research
-
-